【イベントレポ】中辻特許事務所×株式会社IP-RoBo【2025知財・情報フェア&コンファレンス】

目次
2025年9月10日〜12日に3日間開催されました《2025知財・情報フェア&コンファレンス》にて、ブース出展と併せて、出展者プレゼンテーションにも参加させていただきました。
9月12日のプレゼンテーションでは、ゲストとしてAIの特許出願を得意とされつつ商標業務にも力を入れてこられた、中辻特許事務所の代表弁理士である中辻史郎先生をお招きしました。
当イベントの最終日ではありましたが、たくさんのお客様にご来場いただきました。ご来場いただいたみなさま、誠にありがとうございました。
今回は、当日ご来場いただけなかった方に向けて、トークセッションの内容をレポート形式でお届けいたします!
中辻特許事務所様におけるTM-RoBoの活用方法はもちろん、中辻先生の知財業界に進出するAIに対するお考え方など、踏み込んだお話をたくさん聞かせていただきました。
ぜひご覧ください。
「AIが切り拓く商標実務の未来」
~中辻特許事務所に聞く「TM-RoBo」導入の真実~
商標業務の取り組みについて
岩原:中辻特許事務所様では特許調査・出願が業務の大半を占めると伺っておりますが、改めて業務の内訳を教えていただけますでしょうか?
中辻先生(以下、敬称略):特許事務所を設立した当時は特許の調査系のみを担当しておりました。
最近は商標調査をしなければ事務所や企業を守れないと考え、中小企業様のサポートなどを行うことが増えてきています。
と言いますのも、日本の中小企業は全体で356万社のうち、商標出願をしている会社は年間3万5千社ほどで、ほとんどの企業が商標出願をしていません。
そのため企業様のリスクを軽減するために特許だけでなく意匠や商標、訴訟対応などでサポートする比率も増えております。
岩原:大手だけではなく、中小企業にも商標調査が重要だと評価されていらっしゃるのですね。
TM-RoBo導入前の商標業務と課題
岩原:TM-RoBo導入前の商標調査はどのような事務所体制で行われていましたか?
中辻:これまでは特許を中心に取り扱っていたため、知り合いの先生を紹介していました。
現在はその先生が当事務所の一員になっていただきましたので商標にも対応できるようになりましたが、商標業務の負担がその方に集中していました。
岩原:その際はどのような商標調査ツールを使われていましたか?
中辻:当時は民間データベースサービスがなかったため、J-PlatPatを使用していました。
岩原:調査する上での具体的な課題はありましたか?
中辻:「漏れが起こるかもしれない」という課題です。
J-PlatPatも非常に優れたツールであると感じていますが、調査結果は類似度の高いものから順番に表示されるわけではないので、重要な登録商標が検索結果の後半に出てくることが起こり得ます。
そのため隅々まで確認する必要があり、J-PlatPatでの調査はどうしても時間がかかってしまうという課題がありました。
岩原:事務所様にとって調査の抜け漏れは避けなければならないけれど、時間の効率も重要な問題ですよね。
商標業務におけるAI活用についての見通し
岩原:知財分野においてもAIの活用が盛んになってきております。
中辻特許事務所様でのAI活用における対応について、お考えをお聞かせください。
中辻:最近の生成AIの進化は非常に激しく、驚くべきものがあります。
ChatGPTが登場した際は単なる話し相手の様な使い方が限界でしたが、最近のAIエージェントやGoogleDeepMindなどは相当すごいと思います。
実際、AIによって過去300年解が出なかった難問が解かれたり、素晴らしい結果が残されています。
そのため、生成AIや深層学習AIが知財業界に入ってくることも当然の波だと思っております。
一方で技術保持やセキュリティの問題が強く混在しておりますので、弊所ではローカルLMMやSaaS形、クラウド型のLMMなどを活用し、試行錯誤しております。
その際に1つのツールとしてTM-RoBoに着目しました。

岩原:確かに凄まじい勢いでLMMも発達していると思います。
それを知財に活用され始めているとのことですが、知財分野にTM-RoBoのようなAIツールの導入を検討した際、不安などはありませんでしたか?
中辻:そうですね、商標調査の中でも特に商標法第3条の識別力判断は非常に難しいです。
この点についての精度は検討する際の懸念となっていました。
検索するだけのAIツールでは導入の価値は低いと考えており、TM-RoBoに対しても同じような不安はありました。
TM-RoBo導入の決め手
岩原:そうだったのですね。現在はTM-RoBoを導入・活用いただいてると思うのですが、実際に導入を検討した理由はありますか?
中辻:トライアルでTM-RoBoを使ってみたところ、弊所の商標弁理士の見解と同じ結果を出してくれました。検索結果の正当性が非常に良いと感じましたね。
トライアル期間は導入の際の費用対効果と併せてこの精度面を重点的に確認しました。
岩原:なるほど。トライアル期間で不安や懸念点などは解消しましたか?
中辻:懸念点は解消し、導入する価値があると判断したので契約いたしました。
岩原:ありがとうございます。最終的な導入の決め手はありますか?
中辻:当事務所の経営計画の1つとして、Difyの中に様々なアプリケーションを取り入れて活用したいという考えがあります。
当所でもLMMを使用して商標調査を行うツールを独自に作成していましたが、それだけではどうしても主観性が強くなってしまいます。
客観性確保のためにも、導入実績が十分で信頼性もあるTM-RoBoを活用したいと考えました。
TM-RoBoの具体的な活用と効果
岩原:TM-RoBo導入後、中辻特許事務所様に変化はありましたでしょうか?
中辻:お客様から相談を聞きながらリアルタイムに結果を教えることができるようになりました。
例えば知財イベントに参加した際の無料相談コーナーでも、TM-RoBoを使えばその場で結果をお伝えできるのでアクティブに仕事に繋げることができるようになりました。
岩原:通常だと回答までに時間のかかる商標調査が、すぐに確認できるようになったのですね。
実際に調査の相談をされた方の反応などはいかがでしたか?
中辻:やはり対面で、しかも目の前で結果が出るというスピード感だと反応も全然違いますね。
調査結果を数日後にお伝えするのではスピード感に欠けるので、中辻特許事務所では基本的にTM-RoBoを使ってその場で回答し、可能な範囲で調査状況をお見せしています。
とてもスピーディーなためお客様からも良い反応をいただいております。
岩原:TM-RoBoを活用することで、調査の効率化はしましたか?
中辻:1番効率化した点は商標担当の専門家に負担が集中しなくなった点です。
例えば私が福岡でお客様と対面でお話を聞いてる時、東京からオンラインで参加している事務所のスタッフがTM-RoBoを活用し、リアルタイムで結果を出すことができます。
独自ツールも併用することで、商標の専門家でなくともより詳細な調査結果が素早くわかるようになったので、非常に効率的に調査ができるようになりました。
岩原:具体的に何倍くらい効率化したという体感などはありますでしょうか?
中辻:先ほど話した例は立場が逆でも可能です。スタッフが対面で話を聞き、私がTM-RoBoを使ってオンラインで対応すればお客様がどこにいても関係ありません。
そのため作業効率だと10倍以上の効率化はできていると思います。

岩原:それはすごいですね、ありがとうございます。
では新たに確保できるようになった時間はどのように活用されていますか?
中辻:多くは人材育成に充てています。
商標の調査や判断は、基本となる全体観察をはじめ要部観察や分離観察を考える場合や、判断結果がケーススタディとなる部分も多いため、非常に複雑で難しいです。
効率化によって時間を確保できるだけでなく、TM-RoBoを活用することで簡単に均一的な教育ができるできるようになりました。
岩原:なるほど、教育に時間を回すことができれば事務所全体のレベルアップにも繋がりますね。
AI導入について、中辻特許事務所様では公表されているとお聞きしましたが、その理由をお聞かせください。
中辻:やはりAIの流れは誰にも止められないと思います。
秘密保持義務があるので、クラウド型のLLMは使えないといった考えも確かにありますが、これからの時代はそれらも工夫して活用しなければならないと思っています。
これは止めることのできない当然の流れですので、自分たちもAI活用していることをアピールしていかなければ流れに置いて行かれてしまいます。
私はAIのスペシャリストと縁があったため専門家と協力しながら進めていますが、私だけがAIに積極的でも意味がないと考えています。
ですのでぜひ皆様もそういった方と協力して知財業界全体をより良くしていただければと思います。
岩原:素晴らしいお考えですね、ありがとうございます。
TM-RoBoへの今後の期待
岩原:今後のTM-RoBoにご期待いただける点はありますか?
中辻:TM-RoBoには「称呼検索機能」と「商標検索機能」の二つの機能があって、特徴も異なります。
どちらの機能を使うべきかが判断できないような方向けの機能や案内表示があれば、どんな人にも使いこなせる万能なツールになると思います。
また、TM-RoBoの検索結果はわかりやすく数値で表示されるのですが、その根拠となる説明が書いていない部分があります。
学習モデルを使っているので全てを説明することは難しく仕方のないことだと理解していますが、精度が伴っているからこそもったいないと感じます。
当所には非常に優秀な商標の先生が在籍していまして、私を含めた他の人が「難しい」と判断した案件も、その先生が「問題ない」と判断すればその通りの結果になります。
素晴らしいことに、その先生の判断とTM-RoBoの結果は合致しています。
なので私もTM-RoBoを信頼していますが、なぜこの数字になるのかといった根拠があればさらに使いやすくなると思いますね。
岩原:いただいた意見は今後の参考にさせていただきます。
結果の説明に関しましては、現在奈良先端科学技術大学院との共同研究で改善をしていく運びですので、ぜひ今後の動向をご確認いただければと思います。

最後に
岩原:本日はお忙しい中ご登壇いただきましてありがとうございました。
最後に中辻先生からTM-RoBo導入を検討されている方に対してメッセージやアドバイスがあればお願いします。
中辻:TM-RoBo導入を検討している方がいらっしゃいましたらこの場では話せなかった詳細についてや私が感じたことすべてをお話ししますので、ぜひ中辻特許事務所をお尋ねください。
また、事務所様に関しては「AIだから」という理由でライバル心を出しても意味がないと私は思います。
お話しした通り、商標出願をしたことのない企業様はまだまだたくさんおられます。
AIと仕事を奪い合うのではなく協力しながらやっていければいいと思います。
ですので、私のやり方やお伝えできる部分はいくらでもお教えしますので、皆様と協力して知財業界を盛り上げようと考えています。
岩原: 中辻先生、本日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました!
今回はゲストとして中辻特許事務所の代表弁理士である、中辻史郎先生にお越しいただきました。
独自ツールとの併用や、AIに対する考え方など、非常に参考になるお話をたくさん聞くことができました。
改めてになりますが、本日は本当にありがとうございました!
関連記事>>>【イベントレポ】小林製薬株式会社×株式会社IP-RoBo
>>>【イベントレポ】ベガコーポレーション×株式会社IP-RoBo
>>>【イベントレポ】みなとみらい特許事務×株式会社IP-RoBo