商標の先使用権の成立要件とは?事業継続のための必須知識
目次
「この商品名、もう何年も使っているのに、もし他社に商標登録されたらどうなるんだろう…」そんな不安を感じたことはありませんか?大切に育ててきたブランドやサービス名が、ある日突然使えなくなるかもしれない、という心配は、事業を続ける上で大きなストレスですよね。
でも、安心してください。実は、商標登録していなくても、あなたが先に使い始めたという事実が、あなたのビジネスを守る「商標先使用権」という大切な権利になることがあります。この権利は、あなたの事業継続を脅威から守る、まさに救世主となりうる制度なのです。
この記事では、「商標先使用権」が認められるための具体的な「成立要件」を、中学生にもわかるように、とても分かりやすく解説します。この知識を身につければ、万が一の事態にも冷静に対応でき、あなたの事業を安心して守り、さらに発展させていくための強い味方になるはずです。さあ、一緒に大切なブランドを守る知識を学びましょう。
この記事は以下のような人におすすめ!
- 商標先使用権の基本的な意味と、事業を守る重要性がわかります。
- 権利が認められるための具体的な4つの要件を図解で理解できます。
- 先使用権を主張する際に必要な証拠の種類と集め方がわかります。
- 商標権者から警告書が届いた際の冷静な対処ステップが身につきます。
- 先使用権だけに頼らない、事業を守るための最善の対策を理解できます。
記事を読み終える頃には、商標先使用権の知識を習得し、自社のブランドや事業を他社の商標登録から守るための適切な判断と対策ができるようになります。
この記事の監修者
岩原 将文
株式会社IP-RoBo(TM-RoBo運営会社) CEO 弁護士
主として、特許、著作権その他の知的財産権に関する相談、契約、訴訟等を行う。大学・大学院時代には、機械学習に関する研究を行っていた。
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商標の先使用権とは?他社の商標登録から事業を守るための権利

「商標先使用権」という言葉を聞いたことがありますか? これは、他社が先に商標登録をしたとしても、あなたの事業を守ることができる、非常に重要な権利です。
商標登録の原則「先願主義(早い者勝ち)」とその例外
日本では、商標登録は「先願主義」という原則に基づいています。これは、同じ商品やサービスに対して、誰よりも先に商標登録を出願した人が権利を得られるという考え方です。しかし、この原則には例外があります。それが「商標先使用権」です。商標法第32条には、「先願権者(先に商標登録をした者)が、その商標登録の出願をした日よりも前から、その商標を日本国内で現に使用しており、かつ、その使用に係る商品又は役務について、その商標登録の出願があったときに、既にその商標について需要者の間に広く認識されているときは、その者(先使用権者)は、その商標登録の出願があったときに現にその商標を使用している商品又は役務について、その商標について、商標権の効力がない。」と定められています。
つまり、たとえ他社が先に商標登録をしていても、あなたがその商標をすでに日本国内で使用しており、かつ、その商標が多くの人に知られている場合、あなたは引き続きその商標を使用できる権利を持つことができるのです。
詳しくはこちら
経済産業省 特許庁「先使用権制度について」をご確認ください。
先使用権がビジネスで重要になる具体的なケース
ケース1:長年使ってきた屋号や商品名が他社に登録された
例えば、あなたが創業以来20年間、「太陽堂」という屋号で地域密着型のパン屋さんを営んできたとします。この「太陽堂」という名称は、地元では広く知られています。しかし、ある日突然、全国展開する大手ベーカリーチェーンが、「太陽堂」という名称で商標登録を出願したとしましょう。もし、あなたが「太陽堂」を現に使用しており、地域で広く認識されているのであれば、この商標登録によって、あなたの「太陽堂」という屋号での営業が突然できなくなる事態を防ぐことができる可能性があります。
ケース2:地域限定でビジネスをしていたが、全国展開の企業が同じ名称を登録した
あなたは、ある地方都市で、「青い空」という名称で、こだわりのクラフトビールを製造・販売する事業を10年間続けてきました。この地域では「青い空」のビールは大変人気があります。ところが、ある時、全国規模で展開する飲料メーカーが、「青い空」という名称でビールに関する商標登録を出願してきました。この場合も、あなたが「青い空」を現に使用し、その地域で広く認識されているのであれば、商標先使用権が認められ、あなたの事業継続が保護される可能性があります。このように、商標先使用権は、長年培ってきたブランドや事業を守るための強力な盾となり得るのです。
【図解】商標先使用権が認められるための4つの成立要件

せっかく育ててきたブランド名や商品名が、突然、他社の商標登録によって使用できなくなるリスク。そんな事態を防ぐために知っておきたいのが、「商標先使用権」です。これは、商標登録される前にその商標を使い始めていた場合に、一定の条件下で引き続きその商標を使用できる権利です。商標法第32条に定められており、事業継続のためにはぜひ理解しておきたい制度です。
詳しくはこちら
特許庁「先使用権制度について」をご確認ください。
- 要件1:他社の商標「出願前」からその商標を使用していること
- 要件2:商標が需要者の間で広く知られていること(周知性)
- 要件3:不正競争の目的でその商標を使用していないこと
- 要件4:他社の商標登録後も継続して使用していること
要件1:他社の商標「出願前」からその商標を使用していること
商標先使用権が認められるための最も基本的な条件は、他社が商標登録を「出願する前」から、あなたがその商標を実際に使用していたことです。ここでいう「使用」とは、単に商標を考えるだけでなく、商品やサービスに表示して、消費者が認識できる状態になっていることを指します。例えば、商品パッケージに印刷したり、お店の看板に掲げたり、ウェブサイトで表示したりといった行為です。他社の商標出願日よりも後に使用を開始した場合は、この要件を満たさないため、先使用権は認められません。
要件2:商標が需要者の間で広く知られていること(周知性)
次に重要なのが、その商標が、あなたの事業を行っている地域や関連する業界の「需要者の間で広く知られていること」、つまり「周知性」があることです。これは、単にあなたが個人的に使っているだけでなく、多くの消費者が「この商標を見たら、あなたの会社の商品やサービスだと分かる」というレベルまで浸透している必要があるということです。どれくらいの周知性が必要かについては、具体的なパーセンテージが定められているわけではありませんが、例えば、長期間にわたる広告宣伝、メディアでの露出、販売実績などが考慮されます。地域団体商標のようなケースでは、その地域において一定の知名度があることが求められます。
要件3:不正競争の目的でその商標を使用していないこと
商標先使用権は、あくまで正当な事業活動を保護するための制度です。そのため、「不正競争の目的」でその商標を使用していた場合は、先使用権は認められません。具体的には、他社の有名な商標に便乗して、消費者を誤認させようとしたり、不当に利益を得ようとしたりする悪意のある使用が該当します。例えば、意図的に他社の商標と酷似したデザインにし、「〇〇(有名ブランド)風」といった意図で販売することは不正競争とみなされる可能性があります。あなたの事業が、純粋に自社の商品やサービスを消費者に提供することを目的としていることが重要です。
要件4:他社の商標登録後も継続して使用していること
最後の要件は、他社が商標登録をした後も、あなたがその商標を「継続して使用していること」です。つまり、他社の登録を知ってからすぐに使用を中止してしまうと、先使用権を主張できなくなる可能性があります。ただし、「継続して」というのは、「1日も休まず」という意味ではありません。事業の性質上、一時的な休止や季節による変動などは考慮されることがあります。重要なのは、事業活動の根幹として、その商標を引き続き使用しているという意思と実態があることです。商標権の存続期間は原則10年ですが、更新することで永続します。
詳しくはこちら
特許庁「Q&A – 商標」(商標権の存続期間について)をご確認ください。
これらの4つの要件をすべて満たせば、たとえ他社が同じ商標で登録を持っていたとしても、あなたは引き続きその商標を「登録されている範囲内」で使用することができます。
【証拠がカギ】先使用権を主張するために必要なものとは?

商標先使用権は、他社が商標登録するよりも先に、その商標を自社の商品やサービスに使用していたことを証明することで認められる権利です。この権利を主張するためには、客観的な証拠が不可欠となります。
「使用開始時期」を証明する証拠の具体例
商標先使用権の成立には、他社の商標登録出願時よりも前に、当該商標を使用した事業を開始していた、あるいはその準備をしていたことを示す証拠が重要です。
会社の設立登記、営業許可証
会社の設立登記簿謄本や、事業に必要な営業許可証は、事業活動の開始時期を客観的に証明する有力な証拠となります。特に、設立年月日が明記されている書類は、早期の事業開始を裏付ける根拠となります。
広告、パンフレット、カタログの発行日
商標が印刷された広告、パンフレット、カタログなどの発行日も、商標の使用開始時期を示す証拠になり得ます。これらの印刷物には、通常、発行年月日が記載されているため、証拠能力が高いと言えます。
Webサイトの開設日や過去のアーカイブ(Internet Archiveなど)
自社ウェブサイトの開設日や、過去のウェブサイトの記録(Internet Archiveなどで確認できるもの)も、商標の使用開始時期を示す証拠となります。ウェブサイト上のコンテンツに商標が掲載されている場合、その掲載時期が使用開始時期の証明となります。
取引先との契約書や請求書
商標を使用した商品やサービスに関する、取引先との契約書や請求書も、商標の使用実績と時期を証明する有効な証拠です。これらの書類は、実際の商取引に基づいているため、客観的な証拠として重視されます。
「周知性」を証明する証拠の具体例
商標先使用権が認められるためには、単に使用していたという事実だけでなく、その商標が「取引上の需要者において、その商品又は役務についての業務を表示するものとして周知である」状態、つまり広く知られていることが必要です。
売上高や取引実績、店舗数を示す書類
長期間にわたる安定した売上高、多数の取引実績、あるいは広範囲にわたる店舗展開などは、商標の周知性を示す有力な証拠となります。これらの数字は、市場における商標の浸透度を客観的に示します。
広告宣伝の規模や期間を示す資料(広告費の領収書など)
多額の広告宣伝費を投じ、長期間にわたって集中的な広告宣伝を行った事実は、商標の周知性を高める要因となります。広告費の領収書や、広告媒体での掲載実績などが証拠となります。
新聞、雑誌、Webメディアでの掲載記事
自社の商品やサービス、あるいはブランド名が、信頼性の高い新聞、雑誌、Webメディアで頻繁に紹介されている場合、それは商標の周知性を示す強力な証拠となります。記事の掲載日や内容が重要視されます。
消費者アンケートの調査結果
不特定多数の消費者を対象としたアンケート調査で、自社の商標がどの程度認知されているかの結果も、周知性を証明する客観的な証拠となり得ます。調査方法の妥当性や、回答者の属性なども考慮されます。
詳しくはこちら
経済産業省 特許庁「先使用権制度について」をご確認ください。商標権の存続期間や移転に関する情報は、特許庁「Q&A – 商標」で確認できます。
商標先使用権の効力と知っておくべき3つの限界

認められる効力:無償で商標を使い続けられる
商標先使用権が認められると、たとえ後から第三者が同じ、または類似の商標を登録したとしても、あなたがその商標を特定の範囲内で使い続けることができます。これは、商標登録よりも前に、その商標を事業のために使用していた、あるいは準備をしていた場合に認められる権利です。この権利は無償で認められるため、相手にライセンス料などを支払う必要はありません。
例えば、ある事業者が「キラキラ」という名称で清涼飲料水を製造・販売していたとします。その後、別の事業者が「キラキラ」という名称で清涼飲料水について商標登録を取得したとしても、最初の事業者は、その登録よりも前から「キラキラ」という名称を使用していたことを証明できれば、引き続き自社の清涼飲料水に「キラキラ」という名称を使用し続けることができます。
詳しくはこちら
経済産業省 特許庁「先使用権制度について」をご確認ください。
効力の限界1:使用できる事業や地域の範囲を拡大できない
商標先使用権は、あくまでも「商標登録出願時」または「商標登録の日」において、あなたが実際に使用していた、あるいは使用の準備をしていた事業の範囲と地域に限定されます。この範囲を超える事業や地域で新たにその商標を使用することは、原則として認められません。
例えば、あなたが「スマイル」という名称で、ある地域限定で手作りのパンを販売していたとします。その後、全国展開する事業者が「スマイル」という名称でパンの商標登録を取得した場合、あなたはこれまで通り、その地域で手作りパンに「スマイル」という名称を使用できます。しかし、その「スマイル」という名称で、新たにケーキの製造販売を始めたり、全国展開したりすることは、商標先使用権の範囲を超えるため、原則として認められない可能性が高いです。したがって、新規事業への展開や、使用地域の大幅な拡大は、別途、商標登録を検討する必要があります。
効力の限界2:相手(商標権者)の使用を差し止めることはできない
商標先使用権は、あなたの商標の使用を「継続できる権利」であり、相手の商標登録を「無効にする権利」や、相手の商標の使用を「差し止める権利」ではありません。つまり、相手が同じ、または類似の商標を登録し、使用していたとしても、あなたはそれを止めることはできません。
例えば、あなたが以前から「ブルーバード」という名称で、特定の地域で雑貨店を経営していたとします。その後、全国展開する企業が「ブルーバード」という名称で、雑貨全般の商標登録を取得し、全国で展開したとします。この場合、あなたはこれまで通り、あなたの雑貨店で「ブルーバード」という名称を使用し続けることができます。しかし、その全国展開する企業に対して、「あなたの『ブルーバード』という名称の使用を止めなさい」と請求することはできません。むしろ、相手があなたに対して「商標権侵害だ」と訴えてくる可能性もゼロではありません。その際に、商標先使用権を主張して、ご自身の事業継続の正当性を証明することになります。
詳しくはこちら
経済産業省 特許庁「Q&A – 商標」をご確認ください。
もし商標権者から警告書が届いたら?3ステップで冷静に対処

事業を運営していると、突然、商標権者から「警告書」が届くことがあります。これは、あなたの使用している商標が、相手の登録商標と類似しており、権利侵害にあたる可能性がある、という通知です。しかし、慌てる必要はありません。「商標先使用権」という制度を知っていれば、あなたの事業を守ることができる場合があります。ここでは、警告書を受け取った際の具体的な対処法を3つのステップで解説します。
ステップ1:無視はNG!まずは内容を正確に把握する
警告書が届いたら、決して無視してはいけません。無視を続けると、事態が悪化し、損害賠償請求や使用差し止め請求といった法的な措置につながる可能性があります。まずは、警告書に記載されている内容を正確に理解することが重要です。具体的には、以下の点を確認しましょう。
- 相手方の商標権者名
- 相手方が登録している商標
- 相手方が主張する権利侵害の内容(どの商品・役務で、どのような点が類似しているか)
- 警告書の発行日
- 要求されている対応(使用停止、和解金の支払いなど)
- 回答期限
詳しくはこちら
経済産業省 特許庁「Q&A – 商標」(商標権の移転や使用権の設定に関する情報)もご確認ください。
ステップ2:先使用権を主張できるか、証拠を整理・収集する
警告書の内容を把握したら、次に「商標先使用権」の成立要件を満たしているかを確認します。商標法第32条には、先使用権について以下のように定められています。「自己の商標について、その使用の開始の時期から、不正競争の目的をもって、他人の商標と混同を生じさせるような使用をしたものでない限り、その商標登録の出願の時に、その商標について事業に使用をしていたことをもって、その商標登録により設定された権利について、その事業の範囲内において、その商標についての権利を有する。」
つまり、以下の3つの要件を満たしていれば、先使用権を主張できる可能性があります。
- 警告書で指摘された商標について、相手方が商標登録をする以前から、実際に事業に使用していたこと。
- その使用が、不正競争の目的(相手を欺こうとする意図など)をもって行われたものではないこと。
- 警告書で指摘された商標登録の出願時に、その商標について事業に使用していたこと。
これらの要件を満たすことを証明するために、以下の証拠を整理・収集しましょう。
- 事業開始時期を証明する書類(会社設立登記簿、許認可証、契約書など)
- 商標の使用状況を示す資料(商品パッケージ、広告宣伝物、ウェブサイトのアーカイブ、販売実績を示す資料など)
- 使用開始時期が相手方の商標登録出願日よりも前であることを示す資料
詳しくはこちら
経済産業省 特許庁「先使用権制度について」をご確認ください。
ステップ3:弁理士や弁護士など専門家へ速やかに相談する
警告書への対応は、法律的な知識が不可欠です。特に、先使用権の主張には、複雑な法的解釈や、証拠の収集・整理が求められます。自己判断で対応を誤ると、権利を失ったり、予期せぬ損害を被ったりするリスクがあります。そのため、警告書を受け取ったら、できるだけ早く、商標権や知的財産権に詳しい弁理士や弁護士に相談することをおすすめします。専門家は、あなたの状況を正確に分析し、先使用権の有無を判断した上で、相手方との交渉や、法的な手続きの代理など、最善の対応策を提案してくれます。相談料はかかりますが、将来的なリスクを回避し、安心して事業を継続するためには、非常に有効な投資と言えるでしょう。
先使用権に頼らない!事業を守るための最善の対策

先使用権の主張には立証の困難が伴うというリスク
商標先使用権は、他者の商標登録よりも前に、自社がその商標を事業で使用していた場合に認められる権利です。しかし、この権利を主張するには、使用の事実と、それが他者の商標登録出願時点よりも前であることなどを詳細に立証する必要があります。その立証は非常に困難を伴う場合が多く、事業継続の観点からはリスクが伴います。これらの証拠が不十分であったり、時期の特定が曖昧であったりすると、残念ながら先使用権の主張が認められない可能性が高まります。
詳しくはこちら
経済産業省 特許庁「先使用権制度について」をご確認ください。
最も確実な防御策は自社の商標登録
先使用権の主張は、あくまで「他者の権利」を理由に、例外的に自社の事業継続を認めてもらうためのものです。これに対し、自社で商標登録を行うことは、自社の権利を積極的に確立する、最も確実で強力な防御策と言えます。商標登録をすることで、第三者があなたの登録商標と類似した商標を、類似の商品・役務に使用することを禁止する権利(商標権)を得られます。これにより、他者からの権利侵害を未然に防ぐだけでなく、万が一侵害があった場合には、法的な措置を講じることが可能になります。商標権の存続期間は登録から10年間ですが、更新手続きを行うことで半永久的に権利を維持できます。
詳しくはこちら
経済産業省 特許庁「Q&A – 商標」(商標権の存続期間など)をご確認ください。
トラブルを未然に防ぐ「事業開始前の商標調査」の重要性
事業を始めるにあたり、自社で開発した商品名やサービス名が、既に他者によって商標登録されていないかを確認することは非常に重要です。「事業開始前の商標調査」を怠ると、知らず知らずのうちに他者の商標権を侵害してしまうリスクがあります。もし、他者の登録商標と類似する商標を、類似の商品・役務に使用して事業を開始してしまった場合、後々、その商標の使用差し止め請求や損害賠償請求を受ける可能性があります。最悪の場合、事業に使用してきた商標を変更せざるを得なくなり、多大な時間とコストを失うことになりかねません。
商標調査は、特許庁が提供する「J-PlatPat」などのデータベースを利用して、ご自身で行うことも可能です。調査の結果、類似の商標が見つかった場合は、弁理士などの専門家に相談し、リスクを回避するためのアドバイスを受けることを強くお勧めします。
商標先使用権に関するよくある質問(Q&A)

- Q1. どのくらいの期間使っていれば周知性が認められますか?
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商標先使用権が認められるためには、ある商標を「事業の準備または実施をしていたこと」に加えて、「その商標が需要者の間で広く認識されていたこと(周知性)」が必要です。「どのくらいの期間」という明確な基準はありませんが、一般的には、商標登録出願がされた時点から遡って、相当な期間(例えば、数年間)継続して使用され、かつ、その商品・役務の分野で取引者や需要者の間で広く知られていることが求められます。例えば、数ヶ月程度の使用では周知性が認められるのは難しいでしょう。具体的な期間や程度については、個別の事案ごとに判断されます。詳しくは、経済産業省 特許庁の「先使用権制度について」で、法令条文と合わせて解説されていますのでご確認ください。
- Q2. WebサイトやSNSでの使用も証拠になりますか?
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はい、WebサイトやSNSでの商標の使用も、周知性を立証するための重要な証拠となり得ます。商標法では、商標の使用方法を限定していません。したがって、商品への表示だけでなく、広告、カタログ、展示会、そしてインターネット上での表示も、商標の使用とみなされます。特に、Webサイトでの商品・役務の紹介、SNSでの積極的な情報発信や顧客とのコミュニケーションは、商標が広く認識されていることを示す有力な証拠となります。これらの記録は、使用期間や使用範囲を証明する上で役立ちます。
- Q3. ロゴデザインを少し変更した場合でも先使用権は主張できますか?
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ロゴデザインを「少し」変更した場合でも、先使用権が認められる可能性はあります。重要なのは、変更後のデザインが、登録出願時の商標と「需要者の間で同一または類似と認識される程度」であるかどうかです。商標法では、登録される商標と類似する商標についても権利が及ぶ場合があります。先使用権についても同様に、登録出願時に使用していた商標と、現在の使用商標が、全体的な印象や要素において類似していると判断されれば、先使用権の範囲に含まれると考えられます。ただし、大幅なデザイン変更で、需要者が異なる商標であると認識するような場合は、先使用権の主張が難しくなることもあります。
- Q4. 個人事業主でも先使用権は主張できますか?
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はい、個人事業主であっても、条件を満たせば商標先使用権を主張することができます。商標法における「先使用権」は、事業を行っている者(または事業の準備をしている者)に認められる権利であり、事業形態(法人か個人事業主か)は問われません。重要なのは、商標登録出願がされた時点で、その商標を使用した事業が実際に存在していたこと、またはその事業の準備が相当程度進んでいたこと、そしてその商標が需要者の間で広く認識されていたことです。個人事業主の方も、これらの要件を満たしていることを証明できれば、第三者の商標登録によって事業が制限されることを防ぐことができます。
まとめ:正しい知識で自社のブランドと事業を守ろう

商標先使用権は、他社が商標登録する前に、自社がその商標を事業で使用していた、あるいは使用準備をしていた場合に認められる権利です。
先使用権は、商標権者から侵害警告を受けた場合や侵害訴訟を提起された場合に、抗弁として主張するものです。「商標掲載公報」発行日から2ヶ月以内に申立てするのは「登録異議」であり、先使用権の主張手続きとは別物です。
先使用権が認められれば、原則として、登録された商標権者に対しても、これまで通り、「その登録に係る商標」について、「その商標に係る指定商品又は指定役務」について、「事業の継続」のために使用を続けることができます(商標法第51条)。ただし、先使用権は、「その事業の準備をしていた」という事実のみでは認められにくく、「事業の継続」という要件も重要です。また、商標権の存続期間は、登録から10年間ですが、更新手続きを行うことで、さらに10年ごとに延長可能です。
詳しくはこちら
特許庁「Q&A – 商標」をご確認ください。
自社のブランドと事業を守るためには、早期に商標登録を検討し、他社の商標出願状況にも注意を払うことが重要です。万が一、他社から商標権侵害の警告を受けた場合でも、慌てずに、商標先使用権の成立要件を満たしているか、専門家(弁理士など)に相談し、適切な対応を取りましょう。正しい知識と迅速な行動で、大切なブランドと事業を、安心して成長させていきましょう。