商標不使用取消審判を徹底解説|攻めと守りのブランド戦略とは
目次
大切に育ててきたブランドを守る商標権。しかし、せっかく取得した商標が、もし「使っていない」と判断されてしまったらどうなるでしょうか?また、あなたが使いたい商標が、他の会社に登録されているけれど、実際には使われていない…そんな状況で困っていませんか?
「商標不使用取消審判」は、こうしたあなたの疑問や悩みを解決し、ブランド戦略を「攻め」にも「守り」にも活かせる大切な制度です。この記事では、複雑に思えるこの制度の基本から、ビジネスでどう活用すべきかまで、中学生にも分かるように徹底解説します。読み終えれば、あなたの会社のブランドを強く守り、市場での競争力を高めるための具体的なヒントが見つかるはずです。ぜひ最後までご覧ください。
この記事は以下のような人におすすめ!
- 商標不使用取消審判の基本的な仕組みと目的がわかります。
- 審判を請求するための条件や手続きの流れを理解できます。
- 「商標の使用」と認められる具体的な基準が身につきます。
- 審判結果がビジネスに与える影響と、その後の対策がわかります。
- 攻めと守りの両面で商標権を活用する戦略が身につきます。
- 費用感や弁理士に相談すべきタイミングを理解できます。
記事を読み終える頃には、商標不使用取消審判の全体像を理解し、自社のブランドを「攻め」と「守り」の両面から強くするための具体的な戦略を立てられるようになります。
この記事の監修者
岩原 将文
株式会社IP-RoBo(TM-RoBo運営会社) CEO 弁護士
主として、特許、著作権その他の知的財産権に関する相談、契約、訴訟等を行う。大学・大学院時代には、機械学習に関する研究を行っていた。
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商標不使用取消審判とは?使いたい商標を諦めないための制度

使われていない登録商標を取り消せる制度
商標権は、登録すれば永久に有効というわけではありません。もし、登録された商標が3年以上、実際に使用されていない場合、第三者から「商標不使用取消審判」を請求される可能性があります。この制度は、使われていない登録商標を整理し、新しい事業者が円滑に商標を使えるようにするために設けられています。つまり、「眠っている権利」をなくし、「活きた権利」を保護するための仕組みと言えます。
詳しくはこちら
経済産業省 特許庁「商標登録取消審判」をご確認ください。
なぜ商標不使用取消審判の制度があるのか?その目的と趣旨
商標制度の本来の目的は、消費者が商品やサービスを識別しやすくすること、そして、事業者が自己の商品・サービスを他社と区別できるようにすることです。そのため、登録されていても実際には使われていない商標が、他の事業者の事業展開の妨げになるのは、商標制度の趣旨に反すると考えられています。商標法第50条では、「登録商標の不使用による取消し」について規定しており、この制度を通じて、「不使用商標の蓄積」を防ぎ、社会全体で商標が有効活用されることを目指しています。
ビジネスを有利に進める「攻め」と「守り」の活用法
商標不使用取消審判は、自社の権利を守る「守り」の側面だけでなく、競合他社の権利を取消す「攻め」の側面も持ち合わせています。
【守りの活用法】
もし、自社の登録商標に対して不使用取消審判が請求された場合、商標法第50条第2項に基づき、「登録商標の使用の立証」が求められます。具体的には、請求された日から過去3年以内に、継続して商標を使用していたことを証明する必要があります。この立証には、使用していた事実を裏付ける客観的な証拠が不可欠です。例えば、商品のパッケージ、広告宣伝物、販売実績を示す資料などが考えられます。
詳しくはこちら
特許庁リーフレット「不使用取消審判請求に対する登録商標の使用の立証のため…」(PDF)をご参照ください。
【攻めの活用法】
逆に、競合他社が保有する登録商標が、継続して3年以上使用されていないと判断した場合、商標不使用取消審判を請求することで、その商標登録を取り消すことができる可能性があります。これにより、自社がその商標を自由に使えるようになり、事業展開の幅が広がることが期待できます。また、審判を請求するには、「利害関係人」は不要であるため、「何人」も請求できます。したがって、その商標と同じ、または類似の商品・役務について、自己が商標登録を受けようとしている者など、誰でも請求できます。この制度を理解し、戦略的に活用することで、ブランド戦略をより有利に進めることができるでしょう。
【請求したい方へ】不使用取消審判を請求するための3つの必須要件

商標権は、適切に管理・活用することで、ブランド価値を守り、事業を成長させる強力な武器となります。しかし、一方で、権利を維持するためには、一定の要件を満たす必要があります。もし、他社の商標が長年使用されておらず、権利が形骸化している場合、それを「不使用取消審判」という制度を使って取り消すことができるのです。これは、自社のブランド展開を有利に進めるための「攻め」の戦略となり得ます。ここでは、不使用取消審判を請求する際に、必ず満たしておかなければならない3つの必須要件について、分かりやすく解説します。
要件1:誰が請求できるのか(請求人適格)
不使用取消審判は、誰でも請求できます。つまり、単に「使われていない商標があるから」という理由だけで請求できます。例えば、自社が「スターブランド」という名称で商品を販売しようとしているのに、第三者が同じ「スターブランド」という名称で商標登録をしており、かつその商標が3年以上使用されていない場合、取消審判を請求できます。
要件2:いつ請求できるのか(継続して3年以上の不使用)
不使用取消審判を請求できるのは、対象となる商標が「登録されてから3年以上、日本国内において実際に使用されていない」場合です。ここで重要なのは、「継続して」という点です。途中で一時的に使用していた場合には、取消しの対象となりません。商標法第50条では、この不使用取消審判について定められています。
詳しくはこちら
経済産業省 特許庁「商標登録取消審判」をご参照ください。
要件3:どの商標が対象となるのか(請求の対象)
不使用取消審判の請求の対象となるのは、登録されている商標のうち、特定の区分(指定商品・指定役務)について、継続して3年以上日本国内で使用されていないものです。つまり、登録されている全ての区分ではなく、使用されていないと判断される商品・役務ごとに請求することになります。例えば、ある商標が「飲料」と「衣料品」の2つの区分で登録されていたとしても、「飲料」の区分でのみ3年以上使用されておらず、「衣料品」では使用されている場合、取消審判の対象となるのは「飲料」の区分のみとなります。請求の際には、どの商標の、どの指定商品・指定役務について取消しを求めるのかを明確にする必要があります。
詳しくはこちら
特許庁リーフレット「不使用取消審判請求に対する登録商標の使用の立証のため…」(PDF)をご参照ください。
【図解】審判請求から取消決定までの手続きの流れと期間

商標不使用取消審判は、商標権者が登録した商標を実際に使用していない場合に、その商標登録を取り消してもらうための制度です。これは、眠っている商標権を個別的に整理し、新たな事業者が利用しやすくするための重要な役割を果たします。このセクションでは、審判請求から取消決定までの具体的な手続きの流れと、それに要する期間について解説します。
ステップ1:審判請求書の提出
まず、取消を求める側(請求人)が、特許庁に対して「商標登録取消審判請求書」を提出します。この請求書には、取消を求める商標登録番号、請求人の氏名または名称、そして取消を求める理由を具体的に記載する必要があります。取消を求める理由としては、指定商品・役務(サービス)の区分ごとに、審判請求前3年以上、継続してその商標が使用されていないことを具体的に主張します。
ステップ2:商標権者への通知と答弁書の提出
特許庁は、審判請求書が提出されると、その内容を登録商標の権利者(被請求人)に通知します。通知を受けた商標権者は、指定された期間内(通常は2ヶ月以内)に「答弁書」を提出し、自己の商標が適正に使用されていることを立証する必要があります。この答弁書には、商標が使用されている商品や役務の名称、使用の事実を裏付ける客観的な証拠(販売実績、広告資料、写真など)を添付することが求められます。
ステップ3:審理(口頭審理または書面審理)
提出された答弁書の内容に基づき、特許庁は審理を行います。審理は、原則として「書面審理」で行われますが、必要に応じて、当事者双方を呼んで意見を聴く「口頭審理」が行われることもあります。この段階で、請求人は商標権者の提出した証拠に対して反論したり、追加の証拠を提出したりすることができます。
ステップ4:審決(結論の通知)
審理の結果、特許庁は最終的な判断を下し、「審決」として通知します。審決は、審判請求が認められ、商標登録が取り消される場合と、審判請求が棄却され、商標登録が維持される場合のいずれかになります。審決に不服がある場合は、行政事件訴訟として東京高等裁判所に審決取消訴訟を提起することができます。
手続きにかかる期間の目安は?
商標不使用取消審判の手続きにかかる期間は、事案の複雑さや審理の進捗状況によって変動しますが、一般的には、審判請求から審決が確定するまで、おおよそ6ヶ月から1年程度を見込むと良いでしょう。ただし、証拠の提出に時間がかかったり、口頭審理が複数回行われたりする場合には、さらに長引く可能性もあります。迅速な権利行使や権利保護のためには、各ステップで適切な対応を適切なタイミングで行うことが重要です。
勝敗を分ける最大の争点!商標の「使用」と認められる基準とは

商標法で定められた「使用」の定義
商標不使用取消審判で最も重要なのは、「商標がどのように使われているか」という点です。商標法では、商標の「使用」について明確に定義されています。具体的には、商標法第2条第3項において、「商標の使用」とは以下のいずれかに該当する行為を指すと定められています。
- 指定商品若しくは指定役務について登録商標を商品若しくは役務に表示して、又は指定商品若しくは指定役務に係る広告、契約書その他の書類に表示して、これらに関して請求書、値札、値札に関する文書又は見本等に表示して、これらを配布し、又は提示する行為
- 指定商品若しくは指定役務について登録商標を付したものを譲渡し、又は譲渡のために展示する行為
- 指定商品若しくは指定役務について登録商標を付したものを輸入する行為
- 指定商品若しくは指定役務について登録商標を付したものの広告、契約書その他の書類に表示して、これらに関する指示書、値札、値札に関する文書又は見本等に表示して、これらを配布し、又は提示する行為
つまり、単に商標を心の中で思っているだけでは「使用」とは認められず、第三者に対して商標が認識されるような形で表示・提示されることが必要となります。
商標の「使用」と認められる具体例
商品やパッケージに商標を表示する
最も分かりやすい例が、商品そのものや、商品の包装(パッケージ)に商標を表示することです。例えば、お菓子にロゴマークを印刷したり、衣類にブランド名を縫い付けたりする行為は、明確に「使用」と認められます。
Webサイトやカタログなどの広告に使用する
自社の商品やサービスを宣伝するための広告媒体への表示も、「使用」と認められます。具体的には、企業のウェブサイトに掲載するバナー広告や、商品カタログ、パンフレットなどに商標を掲載することが該当します。近年では、SNSでの発信も広告宣伝の一環として、商標の使用とみなされるケースが増えています。
看板や店舗の内装に商標を表示する
実店舗を運営している場合、店舗の看板や、店内の内装に商標を表示することも、「使用」と認められます。これは、来店客に対して、その店舗が特定のブランドのものであることを示す行為だからです。例えば、レストランの店名看板や、アパレルショップの壁面に掲げられたロゴなどが該当します。
詳しくはこちら
特許庁「不使用取消審判請求に対する登録商標の使用の立証のため…」(PDF)をご参照ください。
商標の「使用」と認められない具体例
社内資料など内部でのみ使用している
社内の会議資料や、従業員向けの研修資料などで商標を使用しているだけでは、原則として「使用」とは認められません。なぜなら、これらの使用は、外部の第三者に対して商標が識別されることを目的としたものではないからです。商標権は、あくまで「事業活動において、商品や役務の出所を表示する機能」を守るための権利です。
登録商標と異なるデザインや名称で使用している(社会通念上同一と認められない場合)
登録されている商標と、実際に使用されている商標のデザインや名称が大きく異なり、社会通念上、同一であると認められない場合も、「使用」とはみなされません。例えば、登録商標が「ABC」という名称で、実際には「XYZ」という名称で商品が販売されている場合、これは同一の商標としての使用とは認められません。ただし、軽微なデザインの変更であれば、同一と認められる場合もあります。この判断は、個別のケースごとに慎重に行われます。
商標を使用していないことに「正当な理由」がある場合
商標を使用していない期間が3年以上続いたとしても、「正当な理由」があれば、商標登録が取り消されることはありません。「正当な理由」とは、例えば、災害や疾病など、予見・回避できない事情により使用できなかった場合や、登録したものの、まだ事業を開始しておらず、使用の準備を進めている段階である場合などが考えられます。ただし、この「正当な理由」が認められるかどうかは、具体的な状況によって判断されます。「正当な理由」の証明には、客観的な証拠が重要となります。例えば、災害証明書や医師の診断書などが該当するでしょう。
詳しくはこちら
経済産業省 特許庁「商標登録取消審判」をご参照ください。
不使用取消審判の「その後」は?審決がビジネスに与える影響

不使用取消審判の結果、どのような審決が下されるかで、ビジネスへの影響は大きく変わります。審決を理解し、今後の戦略に活かしていくことが重要です。
商標登録が取り消された場合の効果と注意点
請求人側のメリット:自社で商標登録が可能に
不使用取消審判で商標登録が取り消された場合、その商標は誰でも登録できるようになります。つまり、請求人であった企業が、これまで他社の権利のために使用できなかった商標を、自社で新たに登録できる可能性が出てくるのです。これは、自社ブランドの展開や、競合他社の排除といった攻めのブランド戦略において、非常に有利な状況と言えるでしょう。
商標権者側のデメリット:権利の喪失と事業への影響
一方、商標権者にとっては、商標登録が失われるという重大な結果をもたらします。さらに、その商標を基盤とした商品やサービスを予定していた場合、事業の展開が困難になるケースも考えられます。商標登録の維持には、継続的な使用が不可欠であることを改めて認識する必要があります。
請求が認められなかった場合の効果
請求人側の注意点:再度の請求は可能か
一度請求が却下されたからといって、すぐに諦める必要はありません。ただし、同じ理由で再度請求するには、新たな事実や証拠が必要となる場合があります。商標法では、取消審判は、取消事由が生じた時点から継続して取消事由が存在することが要件とされています(商標法第56条第1項で準用する特許法第百六十七条参照)。審判の過程で、商標権者が実際に商標を使用していた証拠を提出した場合、その証拠が認められれば請求は却下されます。しかし、その後の使用状況によっては、再度請求できる可能性もゼロではありません。
商標権者側のメリット:権利が維持され安定する
請求が認められなかった場合、商標権者は引き続きその商標登録を維持し続けることができます。これは、ブランドの継続性を保ち、事業を安定させる上で非常に重要なことです。今回の審判で、商標権者は「登録商標の使用の立証」を求められます。審判を乗り越え、権利が維持されることで、より一層、商標権を戦略的に活用・保護していくための自信に繋がるでしょう。
実践!不使用取消審判を活用した「攻め」と「守り」のブランド戦略

商標権は、ブランドを守る強力な盾であると同時に、事業展開を有利に進めるための「攻め」の武器にもなり得ます。その武器を効果的に活用し、かつ自社の権利を堅牢に守るために不可欠なのが「商標不使用取消審判」の理解です。本セクションでは、この不使用取消審判を軸とした、商標戦略における「攻め」と「守り」の具体的な方法を解説します。
【攻めの戦略】他社の商標を取り消し、事業展開を有利に進める
「この名称で事業を始めたいのに、既に他社に商標登録されている…」「競合他社が、自社の事業の妨げとなるような商標権を持っている…」このような状況で、商標不使用取消審判は強力な解決策となり得ます。商標法第50条では、登録された商標が、登録後3年以上、継続して使用されていない場合には、誰でも取消審判を請求できると定められています。これは、本来使われていない登録商標が、市場の自由な競争を阻害することを防ぐための制度です。
ケース1:使いたい名称が他社に登録されている場合
あなたが新商品やサービスに付けたいと考えている名称が、既に他社に商標登録されているとします。しかし、その登録された商標が、登録から3年以上、実際に一度も使用されていないことが判明した場合、あなたは不使用取消審判を請求できます。審判で取消が認められれば、その商標権は消滅します。これにより、あなたがその名称を自由に使えるようになり、事業展開の道が開かれるのです。
ケース2:競合他社の参入障壁となっている商標をなくしたい場合
競合他社が、自社の事業領域に類似した商標を登録し、あたかも参入障壁のように利用しているケースも考えられます。このような場合も、その商標が登録から継続して3年以上使用されていないのであれば、不使用取消審判を請求することで、その商標権を取消すことが可能です。これにより、市場における競争が活性化し、自社の事業展開がより有利に進むことが期待できます。
詳しくはこちら
経済産業省 特許庁「商標登録取消審判」をご確認ください。
【守りの戦略】自社の重要な商標権を取消審判から守る
一方で、自社が大切に育ててきたブランド名やロゴといった商標登録が、不使用取消審判によって取り消されてしまうリスクも存在します。特に、長期間にわたり事業で使用していない登録商標については、常にこのリスクと隣り合わせです。自社の重要な商標登録を守るためには、日頃からの備えが不可欠です。
対策1:商標の使用証拠を日頃から保管・管理する
不使用取消審判が請求された場合、最も重要なのは「登録商標を実際に使用していたこと」を証明することです。具体的には、以下のような証拠が有効です。
- 商品やサービスのパッケージ、ラベル
- 商品カタログ、パンフレット、チラシ
- ウェブサイト、SNSでの表示
- 広告宣伝物(テレビCM、新聞広告など)
- 請求書、領収書、契約書(商標が記載されているもの)
- 展示会での使用記録
これらの証拠を、商標登録番号や使用期間とともに整理し、すぐに提出できるよう保管・管理しておくことが重要です。
対策2:登録内容と実際の使用態様が一致しているか定期的に確認する
商標登録をする際に、登録した商標と、実際に事業で使っている商標が一致しているかは非常に重要です。例えば、登録商標の指定商品が「バッグ」であったのに、実際には「財布」のみに使用していた場合、取消審判で「バッグ」について使用していないと判断される可能性があります。また、登録商標と、実際の使用態様が大きく異なっている場合も、取消の対象となることがあります。そのため、定期的に登録内容と実際の使用状況を確認し、乖離があれば、必要に応じて使用の適正化や、使用範囲の変更を検討しましょう。
対策3:使用していない商標権は整理する(権利の放棄)
事業の変遷や、戦略の変更により、将来的に使用する見込みのない商標権を保有し続けている場合、それらの商標権が不使用取消審判の対象となるリスクがあります。また、維持費(登録料や更新料)も継続的に発生します。もし、今後も使用する予定のない商標権があるのであれば、積極的に権利を放棄することを検討しましょう。権利を放棄することで、維持費の負担が軽減されるだけでなく、将来的な不使用取消審判のリスクを回避することができます。
費用はいくら?弁理士に依頼するメリットと相談のタイミング

商標不使用取消審判は、商標を守るための強力な武器ですが、その手続きには費用と専門知識が不可欠です。ここでは、かかる費用、弁理士に依頼するメリット、そして相談すべきタイミングについて詳しく解説します。
不使用取消審判にかかる費用の内訳と相場
不使用取消審判を請求された場合、主に特許庁への印紙代と、弁理士に依頼する場合の報酬が発生します。これらの費用を把握しておくことは、迅速かつ的確な対応のために重要です。
| 費用の種類 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 特許庁への印紙代(1区分) | 55,000円 | 15,000円+40,000円 |
| 弁理士着手金 | 10万円〜30万円程度 | 事案の複雑さによって変動 |
| 弁理士成功報酬 | 10万円〜50万円程度 | 事務所・案件内容により異なる |
不使用取消審判の請求自体には、特許庁に支払う印紙代は1区分の場合、15,000円+1区分40,000円の合計55,000円がかかります。弁理士に依頼する場合、その費用は事案の複雑さや弁理士事務所によって異なりますが、一般的には、着手金として10万円~30万円程度、成功報酬としてさらに10万円~50万円程度が目安となることが多いです。ただし、これはあくまで一般的な相場であり、個別のケースによって変動します。詳しくは、複数の弁理士事務所に相談し、見積もりを取ることをお勧めします。
専門家である弁理士に依頼する3つのメリット
不使用取消審判への対応は、専門的な知識と経験が求められます。弁理士に依頼することで、これらの負担を軽減し、より有利な結果を得られる可能性が高まります。
- メリット1:適切な証拠の収集と主張立証
弁理士は、どのような証拠が有効かを見極め、効果的に収集・提出することで、あなたの主張を強力に後押しします。商標法第50条では、商標権者は請求された登録商標が、指定商品・役務について継続して3年以内に使用されていたことを立証する必要があります。 - メリット2:複雑な手続きの代行による負担軽減
不使用取消審判の手続きは、書類の作成、証拠の提出、期日への対応など、多岐にわたります。弁理士は、これらの煩雑な手続きをすべて代行し、あなたを煩わしい事務作業から解放します。これにより、あなたは本業に集中することができます。 - メリット3:戦略的なアドバイスによる成功確率の向上
単に手続きを進めるだけでなく、弁理士はあなたの状況を分析し、最適な戦略を立案します。例えば、商標の使用状況をどのように説明すれば効果的か、どのような証拠を提出すべきか、相手方の主張に対してどのように反論すべきかなど、専門的な視点からのアドバイスを提供します。
弁理士への相談を検討すべきタイミング
不使用取消審判の通知を受け取ったら、速やかに弁理士に相談することが重要です。なぜなら、回答期限が定められており、期限内に適切な対応をしないと、商標登録が取り消されてしまう可能性があるからです。この短期間で、状況を把握し、十分な証拠を収集し、論理的な反論を組み立てることは、専門家でなければ困難です。また、普段からブランド戦略の一環として、商標の使用状況を記録・管理しておくことも、万が一の事態に備える上で非常に有効です。日頃から弁理士と良好な関係を築き、定期的に商標ポートフォリオの見直しを行うことで、より効果的なブランド保護が可能になります。
まとめ:商標不使用取消審判を理解し、強いブランドを構築する

商標不使用取消審判は、空権化した権利を個別的に整理し、健全な商標制度を維持するための重要な制度です。攻めと守りの両面から、ブランド戦略を強化するために、その仕組みを理解しておくことは必須と言えるでしょう。
商標不使用取消審判の基本と重要性
商標法第50条によれば、審判請求前に継続して3年以上、登録商標を使用していない場合、商標登録が取り消される可能性があります。これは、実際に使用されていない商標が、登録されたままになっている状態を解消し、誰でも自由に使えるようにするための制度です。
詳しくはこちら
経済産業省 特許庁「商標登録取消審判」および特許庁リーフレット「不使用取消審判請求に対する登録商標の使用の立証のため…」(PDF)をご参照ください。
ブランド戦略における攻守の視点
商標不使用取消審判は、競合他社からの攻撃(取消請求)を防ぐ「守り」の側面だけでなく、権利の維持・強化を通じて、自社のブランド価値を高める「攻め」の側面も持ち合わせます。常に商標の使用状況を把握し、必要な証拠を適切に保管しておくことは、予期せぬ取消請求からブランドを守るための基本です。また、積極的に商標を使用し、その使用実績を積み重ねることは、ブランドの浸透を促進し、競合に対する優位性を確立することにも繋がります。1つの商標登録の維持には、年間数千円から数万円程度の特許庁への印紙代がかかりますが、これを惜しんで権利を失うことは、ブランドにとって計り知れない損失となり得ます。常に最新の法令や実務動向を把握し、戦略的な商標管理を行うことで、揺るぎない強いブランドを構築していきましょう。
よくある質問
- Q1: 使いたい商標が登録されているみたいだけど、本当に使われていないか調べる方法はありますか?
-
はい、調査できます。まずは特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」で登録情報を確認しましょう。さらに、インターネット検索や業界調査で、実際にその商標が商品やサービスに使われているかを確認します。ただし、一般に公開されていない使用例もあるため、確実な判断は難しい場合も。正確な調査や戦略立案には、専門家である弁理士への相談をおすすめします。
- Q2: 不使用取消審判は、誰でも請求できるのでしょうか?何か特別な資格が必要ですか?
-
はい、不使用取消審判は、その商標登録に利害関係がない第三者でも、誰でも請求することができます。使いたい商標が他人に登録されていて困っている場合など、誰からの請求であっても特許庁は受け付けます。この制度は、使われていない商標を開放し、社会の利益につなげることを目的としているため、請求のハードルは低く設定されています。
- Q3: 審判を請求してから、その商標が使えるようになるまで、だいたいどれくらいかかりますか?
-
審判請求から特許庁の判断(審決)が出るまで、通常は半年から1年程度かかります。もし取消しが認められても、すぐにその商標を使えるわけではありません。相手方の商標について不使用が確実な場合には、不使用取消審判の請求と同時に、或いは審決が確定した後にご自身で商標出願を行い、審査を経て登録される必要があります。そのため、実際に権利を取得するまでには、さらに数ヶ月以上かかると考えておきましょう。
- Q4: 登録した商標と少し違うデザインのロゴを使っています。これも「使用」と認めてもらえますか?
-
登録商標と完全に同じでなくても、「社会通念上同一」と判断される範囲であれば「使用」と認められる可能性が高いです。例えば、書体を少し変えたり、ひらがな・カタカナ・ローマ字の表記を変えたりした場合などがこれにあたります。ただし、この判断は専門的でケースバイケースです。不安な場合は、商標の使用状況を弁理士に見せて相談するのが確実です。
- Q5: 逆に、自社の商標が「使っていない」と判断されないために、どんな対策をすれば良いですか?
-
自社の登録商標を守るためには、継続して使用し、その証拠を保管しておくことが最も重要です。例えば、その商標を付けた商品のカタログ、ウェブサイトのスクリーンショット、広告、契約書や納品書などを日付がわかる形で残しておきましょう。少なくとも3年に一度は、登録している商標が適切に使われているか、証拠は揃っているかを確認する習慣をつけることをおすすめします。
- Q6: 弁理士に頼まず、自分で審判の手続きを進めることは可能ですか?
-
はい、ご自身で手続きを行うことも法律上は可能です。しかし、審判の手続きは専門的な知識を要し、特に相手方が商標の「使用」を主張してきた場合、その証拠が有効かどうかを判断するのは非常に複雑です。勝率を高め、時間や手間を節約するためにも、商標の専門家である弁理士に依頼するのが一般的です。多くの事務所で無料相談を実施しているので、まずは気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
参考文献
- https://www.jpo.go.jp/system/trial_appeal/index.html
- https://www.jpaa.or.jp/intellectual-property/trademark/
- https://www.jpo.go.jp/system/trial_appeal/shubetu-shohyo_torikeshi/index.html
- https://chizai-portal.inpit.go.jp/
- https://kigyobengo.com/media/useful/1349.html
- https://www.lucias-law.jp/minji13/
- https://toreru.jp/media/trademark/3113/