商標の識別力とは?登録できない例と審査基準・対策を徹底解説
目次
新しい商品やサービスのネーミングを商標登録したいとき、「このネーミングで本当に商標登録できるのか」と不安になる知財・商品開発担当者は少なくありません。商標登録の可否を大きく左右するのが、商標の識別力という考え方です。本記事では、商標の識別力の意味と商標法第3条第1項各号による判断基準、商標登録できない具体例、識別力がないと言われたときの対策、そして出願前にリスクを下げる方法までをわかりやすく解説します。読み終えたとき、自社のネーミング候補が商標登録される見込みを自分で見極められる状態を目指します。

この記事は以下のような人におすすめ!
- 新商品・サービスのネーミングが商標登録できるか不安な人
- 商標の識別力について、登録できない具体例と判断基準を知りたい人
- 拒絶された場合の対策と、出願前にリスクを下げる方法を知りたい人
記事を読み終えたとき、自社のネーミング候補が商標登録される見込みを自分で見極められる状態を目指せます。
この記事の監修者
岩原 将文
株式会社IP-RoBo(TM-RoBo運営会社) CEO 弁護士
主として、特許、著作権その他の知的財産権に関する相談、契約、訴訟等を行う。大学・大学院時代には、機械学習に関する研究を行っていた。
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商標の識別力とは|自他商品・役務を区別する力

識別力の定義と商標が登録される仕組み
識別力とは、ある標章を見た需要者が「これは特定の事業者の商品や役務だ」と認識できる機能のことです。たとえばパソコンに付けられた造語のブランド名は、誰の製品かを区別する目印として働きます。商標登録は、こうした自他商品・役務を区別する力を備えた標章に対して、指定した商品・役務の範囲で独占権を与える制度です。逆に区別する力を持たない言葉は、商標登録の対象になりません。商標は文字だけでなく図形や立体なども商標登録の対象となり、いずれも識別力の有無が判断の軸になります。
識別力がないと商標登録できない理由
識別力のない商標が商標登録できないのは、誰もが使う言葉の独占を避けるという公益的な理由があるからです。普通名称や品質を表す言葉に独占権を与えてしまうと、同じ商品を扱う他人が一般的な表現を使えなくなり、取引の現場が混乱します。たとえば「りんご」という言葉が果物の販売で独占されれば、他の果物店はその名称を商品説明に使えなくなってしまいます。識別力の審査は、こうした不都合を未然に防ぐための仕組みとして機能しています。
識別力の強弱による商標の分類
識別力には強弱があり、商標は、造語・恣意的・暗示的・記述的・一般名称という5段階で整理できます。意味を持たない造語や、商品と無関係な言葉を組み合わせた恣意的な商標は識別力が強く、商標登録されやすい傾向にあります。一方、商品の特徴をそのまま示す記述的な表現や一般名称に近づくほど識別力は弱まり、商標登録は難しくなります。識別力は商品・役務との関係で相対的に決まる点も重要で、ある分野では弱い言葉が別の分野では強い識別力を持つこともあります。ネーミングの設計では、この強弱を意識して候補を選ぶことが出発点になります。
識別力がない商標の例|商標法第3条第1項各号で解説

識別力を欠く商標は、商標法第3条第1項第1号から同第6号までの各号で類型化されています。自社のネーミングがどの号に該当するおそれがあるかを知れば、商標登録できない例を具体的にイメージできます。ここでは6つの類型を、条番号と具体例を対応させながら順に確認します。
商標法第3条第1項が定める識別力を欠く類型は、次のとおりです。
| 条番号 | 類型 | 具体例のイメージ |
|---|---|---|
| 第1号 | 普通名称を普通に用いる方法で表示する標章のみ | パソコンに「パソコン」 |
| 第2号 | 慣用されている商標 | 清酒に「正宗」 |
| 第3号 | 産地・品質・原材料・効能・用途・形状・数量・価格などの記述的表示のみ | みかんに「和歌山」 |
| 第4号 | ありふれた氏又は名称を普通に表示する標章のみ | 「山田商店」 |
| 第5号 | 極めて簡単で、かつありふれた標章のみ | 単純な一文字や数字 |
| 第6号 | 需要者が何人の業務に係るか認識できないその他の標章 | 上記以外で識別力なし |
それぞれの号を詳しく見ていきます。
詳しくはこちら
e-Gov法令検索「商標法」をご確認ください。
普通名称・慣用商標(第3条第1項第1号・第2号)
商標法第3条第1項第1号は、その商品・役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標を識別力なしとします。普通名称とは、取引の場でその商品を指す一般的な名称のことで、パソコンに「パソコン」と付けるような例が該当します。
同第2号は、同業者の間で慣用されている商標を対象とし、清酒における「正宗」のように、長年広く使われ特定の事業者を示さなくなった標章が当たります。どちらも誰もが使う言葉であり、特定の他人に独占させると取引の妨げになるため商標登録できません。
記述的商標(第3号)と産地・品質・用途などの具体例
商標法第3条第1項第3号は、商品の産地・品質・原材料・効能・用途・形状・生産や使用の方法・時期・数量・価格などを普通に表示する標章のみからなる商標を識別力なしとします。これらは記述的商標と呼ばれ、識別力をめぐる審査で最も論点になりやすい類型です。たとえば、みかんに産地名の「和歌山」、菓子に品質を示す「特選」を付ける場合などが想定されます。こうした表示は商品の説明にすぎず、誰の商品かを区別する力を持たないと判断されます。なお品質を誤認させるおそれがある商標は、商標法第4条第1項第16号により別途登録できないため、商品との関係を慎重に確認する必要があります。
ありふれた氏名・簡単な標章・その他(第3条第1項第4号〜同第6号)
商標法第3条第1項第4号は、ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標を対象とし、ありふれた姓に「商店」を付けた名称などが該当します。同第5号は、極めて簡単で、かつありふれた標章のみからなる商標を指し、単純な一文字や数字、ありふれた図形がこれに当たります。同第6号は前各号に当てはまらなくても、需要者が何人の業務に係る商品・役務であるかを認識できない商標を広く識別力なしとする総括規定です。これらの号は、例えば「キャッチフレーズ」等、他の商標法第3条第1号~同第5号では拾いきれない識別力の弱い標章を補う役割を担っています。
識別力の審査基準|商標法の条文と商標審査基準の関係

識別力の有無は、法律である商標法第3条第1項各号という絶対的なルールと、特許庁が公表する商標法審査基準という指針的なルールの2層で判断されます。両者の役割を理解すると、なぜ似たネーミングでも結論が分かれるのかが見えてきます。ここでは条文と審査基準それぞれの位置づけを整理します。
絶対的なルールとなる商標法第3条第1項各号
識別力を判断する土台は、商標法第3条第1項各号という条文そのものです。第1号から第6号までの各号は、登録できない商標の枠を法令として定めており、審査官も裁判所もこの条文を出発点に判断します。さらに同第3条第2項は、商標法第3条第1項第3号から第5号に該当しても、使用された結果として需要者が特定の事業者の商品・役務だと認識できるに至った標章は商標登録を受けられると定めています。これらの条文は商標出願の可否を決める根拠であり、識別力を検討するうえで必ず押さえるべき一次情報です。
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e-Gov法令検索「商標法」をご確認ください。
指針となる特許庁の商標法審査基準
商標審査基準とは、特許庁が各号の判断を統一するために公表している審査の指針です。条文だけでは「普通に用いられる方法」や「ありふれた」といった要件の線引きが分かりにくいため、審査基準が具体的な考え方や判断要素を補足しています。これにより、審査官ごとの判断のばらつきを抑え、出願人が結果を予測しやすくなります。審査基準は法令そのものではなく運用の指針という位置づけのため、最終的な拘束力は条文にあります。実際の出願では、条文と審査基準の双方を踏まえて識別力を見立てることが実務上の基本です。
詳しくはこちら
特許庁「商標審査基準」をご確認ください。
識別力がないと言われたときの4つの対策

特許庁から識別力がないとして拒絶理由通知を受け取っても、商標登録を諦める必要はありません。意見書での反論、使用による識別力の獲得という4つの対策を状況に応じて選べます。ここでは具体的な進め方を2つのグループに分けて解説します。
意見書で反論する・造語化や結合で識別力を補う
まず検討したいのは、意見書で識別力があると反論する方法です。意見書では、その標章が単なる記述的表示ではないことや、需要者が出所を認識できる事情を証拠とともに主張します。これは、弁理士など専門家への相談を前提に方針を決めることをおすすめします。
使用による識別力の獲得(第3条第2項)
文字商標で識別力が認められにくい場合は、使用による識別力の獲得という対策があります。商標法第3条第2項は、第1項第3号から第5号に該当する商標でも、長年の使用によって需要者が特定の事業者の商品・役務だと認識できるに至った場合は登録を認めています。これはセカンダリーミーニングとも呼ばれ、宣伝や販売の実績を示す証拠の積み上げが鍵になります。獲得を証明するには相応の使用実績が必要なため、計画的な準備が欠かせません。
詳しくはこちら
e-Gov法令検索「商標法」をご確認ください。
出願前に識別力のリスクを下げる方法とAIの活用

識別力で拒絶されると、時間も費用も無駄になりかねません。だからこそ、出願前にネーミング候補の識別力リスクを把握し、危険な案を早い段階で除外する実務フローが重要になります。ここでは事前調査の考え方と、AIを使って候補を効率的に絞り込む方法を紹介します。
出願前の商標調査で識別力欠如のリスクを事前に把握する
出願前に行う商標調査は、識別力欠如のリスクを下げる最も基本的な手段です。先行する登録商標や出願の傾向を確認し、自社の候補が普通名称や記述的表示に近づいていないかを照合することで、拒絶される可能性を事前に見極められます。識別力で拒絶された場合は商標登録が拒絶される理由を踏まえた対応が必要になり、中間手続きの分だけ登録までの期間や費用も増えがちです。手戻りを避けるためにも、ネーミングを確定する前の調査を習慣にすることが、結果的にコストを抑える近道になります。費用感を知りたい場合は商標調査の費用相場もあわせて確認しておくと安心です。
AI称呼検索・AI商標検索で識別力の高い候補を絞り込む
大量のネーミング候補から識別力の高い案を効率的に選ぶには、AIを使った客観的な指標化が役立ちます。TM-RoBoのAI称呼検索は、称呼つまり読み方を対象に類否の統計指標を算出し、候補のオリジナル性を素早く判断します。複数語を組み合わせた結合商標にはAI商標検索が対応し、各種の指標で識別力の見立てを支援します。さらにAI商標生成を使えば、作りたいイメージを学習しながら識別力を意識した候補を自動で広げることも可能です。TM-RoBoの導入企業では作業時間削減率が平均68%、結合商標の調査時間が平均4分という効率化が確認されています。化粧品分野のライオン株式会社の導入事例:AIが実現した商標調査の均質化と効率化や、年間3000件規模の調査を扱うポーラ・オルビスホールディングスの導入事例:調査業務効率化と人材育成への貢献では、開発部門も含めた調査の標準化が進んでいます。こうしたAI活用は、専門家でない担当者でも識別力リスクの一次評価を行える環境づくりに貢献します。製造業のダイキン工業株式会社の導入事例:知財業務の効率化と精神的負担の軽減のように、担当者の負担軽減につながる点も実務上の大きな利点です。
商標の識別力に関するよくある質問(FAQ)
- 識別力がない商標は絶対に商標登録できないのですか
-
原則商標登録できませんが、商標法第3条第2項により使用で識別力を獲得すれば登録の余地があります。専門家への相談をおすすめします。
- 識別力は商品や役務によって変わりますか
-
変わります。識別力は指定した商品・役務との関係で相対的に判断されるため、ある分野で弱い言葉が別の分野では強い識別力を持つこともあります。
- 記述的商標とは何を指しますか
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商品の産地・品質・原材料・用途・形状・数量・価格などをそのまま表す商標です。商標法第3条第1項第3号に該当し、識別力なしと判断されやすい類型になります。
- 普通名称と慣用商標の違いは何ですか
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普通名称は商品を指す一般的な名称、慣用商標は同業者が広く使い特定の出所を示さなくなった標章です。第1号と第2号でそれぞれ規定されています。
- 出願前に識別力を確認する方法はありますか
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出願前の商標調査で先行登録や記述的表示への近さを照合できます。TM-RoBoのAI称呼検索やAI商標検索を使えば、候補の識別力を客観的な指標で素早く確認できます。
- 識別力がないと拒絶されたら費用は無駄になりますか
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意見書での反論や補正で登録に至る場合もあり、必ずしも無駄にはなりません。ただし中間手続きの分だけ期間と費用が増えるため、出願前の調査でリスクを下げることが重要です。

まとめ|識別力を理解して登録される強い商標を選ぼう
商標の識別力とは、自分の商品や役務を他人のものと区別する力であり、登録できるかどうかを決める最初の関門です。商標法第3条第1項各号が普通名称や記述的表示など識別力を欠く6つの類型を定め、特許庁の商標法審査基準がその判断を補っています。識別力がないと言われても、意見書での反論、第3条第2項の使用による獲得という対策があります。
最も大切なのは、出願前の商標調査で識別力リスクを事前に把握することです。TM-RoBoのAI称呼検索やAI商標検索を活用すれば、開発部門でも候補を効率的に絞り込めます。識別力の考え方を理解し、商標登録され得る強い商標を選んだうえで、具体的な出願は弁理士など専門家に相談しながら進めましょう。