商標法違反のリスクと罰則とは?事業を守るための対策を解説
目次
「商標法違反」と聞いて、漠然とした不安を感じていませんか?知らず知らずのうちに他社の商標権を侵害し、大切な事業が危険にさらされるのではないかと心配な経営者や担当者の方もいるでしょう。
せっかく育ててきたブランドやサービスが、予期せぬトラブルで危険にさらされるのは絶対に避けたいですよね。しかし、何がリスクで、どう防ぐべきか、具体的な対策が分からず悩んでいませんか?この記事では、そんなあなたの悩みを解消します。商標法違反のリスクや重い罰則、そして自社の事業とブランドをしっかり守るための具体的な対策を分かりやすく解説します。これを読めば、商標トラブルを未然に防ぎ、安心して事業を成長させるための確かな知識と自信が手に入るでしょう。
この記事は以下のような人におすすめ!
- 事業を守るために、商標法違反の基本と具体例が理解できます。
- 商標法違反で課される刑事罰と民事責任の全貌がわかります。
- 事業とブランドを守るための、具体的な予防策が身につきます。
- 商標権侵害の警告書が届いた際の、冷静な初期対応がわかります。
- 商標を守るだけでなく、ブランド価値を高める戦略が身につきます。
記事を読み終える頃には、商標法違反のリスクを回避し、自社のブランドと事業をしっかり守るための具体的な方法と自信を手に入れることができるようになります。
この記事の監修者
岩原 将文
株式会社IP-RoBo(TM-RoBo運営会社) CEO 弁護士
主として、特許、著作権その他の知的財産権に関する相談、契約、訴訟等を行う。大学・大学院時代には、機械学習に関する研究を行っていた。
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商標法違反とは?「知らなかった」では済まされない経営リスク

「うちの商品は人気があるから、似たような名前でも大丈夫だろう」そんな安易な考えは、あなたのビジネスを致命的な危機に晒す可能性があります。商標権侵害は、法的な問題に留まらず、事業継続そのものを脅かす深刻なリスクです。「知らなかった」では済まされない、商標法違反の恐ろしさと、その対策について、詳しく解説していきましょう。
商標権侵害が成立する3つの要件
商標権侵害が成立するには、主に3つの要件が満たされる必要があります。
- 「登録された商標」と「使用されている商標」が「類似している」こと
- それらの商標が「同一または類似の商品・役務(サービス)」に使用されていること
- そのような使用が「商標権者の権利を侵害する」ものであること
例えば、有名ブランドのロゴを無断で使用したり、それに酷似したデザインを模倣したりする行為は、商標権侵害に該当する可能性が非常に高いと言えます。また、商標登録自体に問題があった場合も、商標権侵害とみなされることがあります。商標法第五十三第二項や第七十七条第三項において準用される特許法第二十五条の規定に違反して商標登録された場合や、条約に違反して商標登録された場合などが該当します。
詳しくはこちら
商標法(e-Gov法令検索)をご参照ください。
商標法違反が事業に与える致命的な影響
商標法違反は、単なる法的なペナルティに留まりません。あなたの事業に、計り知れないほどのダメージを与える可能性があります。
金銭的損失:損害賠償や事業停止コスト
商標権侵害を犯した場合、権利者から損害賠償請求を受けることになります。その金額は、侵害行為の悪質性や規模によって大きく変動しますが、数百万、数千万円にも及ぶケースも珍しくありません。さらに、差止請求によって、違反した商品やサービスの販売停止を命じられることもあります。これにより、それまで投入してきた広告宣伝費や在庫費用が無駄になるだけでなく、事業そのものがストップしてしまうリスクもあります。警察庁の発表によると、令和4年中には264件の商標権侵害事犯(偽ブランド事犯等)が検挙されており、その深刻さが伺えます。
詳しくはこちら
警察庁「偽ブランド品・海賊版対策」をご参照ください。
信用の失墜:ブランドイメージの低下と顧客離れ
一度、商標法違反というレッテルが貼られてしまうと、築き上げてきたブランドイメージは一瞬で崩壊します。消費者の信頼を失い、顧客離れが加速することは避けられません。「あの会社は模倣品を作っている」というネガティブな評判は、インターネットなどを通じて瞬く間に広がり、一度失った信用を取り戻すのは極めて困難です。結果として、新規顧客の獲得が難しくなり、既存顧客も離れていくという最悪のシナリオに陥る可能性もあります。これは、事業の存続そのものを危うくする、まさに致命的な影響と言えるでしょう。
【事例で学ぶ】あなたの会社は大丈夫?商標法違反の具体例

商標法違反は、単なる「うっかりミス」では済まされず、企業の存続に関わる重大なリスクを招く可能性があります。ここでは、具体的な事例を通して、どのようなケースで商標法違反となるのか、そして、そのリスクを回避するためにどのような対策が必要なのかを解説します。
ケース1:他社の登録商標と同一・類似の名称を使用してしまった
最も典型的な商標法違反は、他社が既に登録している商標と「同一」または「類似」する名称を、「同一」または「類似」する商品・役務(サービス)に使用してしまうケースです。例えば、人気ブランドのロゴや商品名を無断で模倣して使用したり、それに似せた名称で似たような商品・サービスを提供したりすると、商標権侵害にあたる可能性が非常に高くなります。商標法では、商標登録された商標権者には、その商標を使用する権利が独占的に認められています(商標法第25条参照)。無断でこれに抵触する行為は、商標権の侵害となり、差止請求や損害賠償請求の対象となります。「知らなかった」では済まされないため、事業開始前や新商品・サービス展開時には、必ず同一・類似商標の調査を行うことが不可欠です。
ケース2:提供する商品・サービスの範囲が類似していると判断された
商標法違反は、名称の類似性だけでなく、提供する商品や役務(サービス)の「類似性」によっても成立します。たとえ名称が少し異なっていても、消費者が「あの商品・サービスと同じ会社が提供しているのではないか」と誤認するような状況は、商標権侵害とみなされる可能性があります。例えば、有名ブランドのバッグの名称と似た名称で、似たデザインのキーホルダーを販売した場合、たとえバッグそのものでなくても、消費者が混同する恐れがあれば、商標権侵害となる可能性があります。「少し似ているくらいなら大丈夫だろう」という安易な判断は禁物です。
ケース3:WebサイトやSNSで意図せず他社の商標を使用してしまった
インターネットの普及により、商標法違反のリスクは、より身近なものとなっています。WebサイトやSNSでの情報発信において、他社の登録商標を無断で使用してしまうケースが後を絶ちません。例えば、
- 他社製品のレビュー記事で、製品名やロゴを無許可で使用する
- 自社サービスの説明で、競合他社のサービス名やロゴを比較対象として使用する
- SNSで、他社ブランドのロゴを商品画像に写り込ませたまま投稿する
これらは、意図せずとも商標権侵害にあたる可能性があります。特に、著作権法と商標法は密接に関連しており、著作権侵害と商標権侵害が同時に発生するケースも少なくありません。Web上での発信においては、「引用」の範囲を正確に理解し、他社の商標を無断で使用しないよう、細心の注意を払う必要があります。
商標法違反の罰則とは?刑事罰と民事上の責任を詳しく解説

商標法違反は、単なるルール違反にとどまらず、事業継続を揺るがす深刻なリスクを伴います。そのリスクを理解し、適切な対策を講じることは、企業の持続的な成長のために不可欠です。ここでは、商標法違反に科される罰則について、刑事罰と民事上の責任の両面から詳しく解説します。
拘禁刑または罰金が科される「刑事罰」
商標法違反は、悪質なケースにおいては刑事罰の対象となります。これは、社会全体の秩序を守るという観点から、違反行為に対する厳罰を科すものです。警察庁の発表によると、令和4年中に警察が検挙した商標権侵害事犯(偽ブランド品などの模倣品販売)は、264件、検挙人員は289人にのぼっています。
| 対象 | 罰則内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 個人 | 10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(併科あり) | 商標法第78条 |
| 法人(両罰規定) | 3億円以下の罰金 | 商標法第82条 |
商標法第78条では、「商標権又は専用使用権を侵害した者は、十年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」と定められています。また、商標法第82条に定められている「両罰規定」により、法人の代表者などが違反行為を行った場合、その法人に対しても最大3億円以下の罰金が科せられます。
詳しくはこちら
e-Gov法令検索「商標法」で条文をご確認ください。
事業継続を脅かす「民事上の責任」
刑事罰とは別に、商標権者から民事上の責任を追及されることもあります。これは、商標権者の権利を侵害されたことに対する損害を賠償する責任です。民事上の責任は、事業の継続そのものを脅かす可能性のある、非常に深刻なものです。
差止請求:商品やサービスの提供停止を求められる
商標権者は、商標法違反行為が行われている場合、その行為の差止めを請求できます。これは、商標法第36条に定められている権利であり、違反している商品やサービスの製造、販売、提供などを停止させることを求めるものです。これにより、事業活動が一時的または恒久的に停止してしまうリスクがあります。
損害賠償請求:利益の逸失分を請求される
商標権者は、商標法違反によって被った損害の賠償を請求することができます。商標法第38条では、商標権侵害による損害賠償(損害額の推定等)について規定されています。なお「侵害の停止又は予防を請求する」差止請求権は商標法第36条に規定されており、信用回復措置(謝罪広告等)は商標法第39条(特許法第106条の準用)に基づきます。具体的には、新聞やウェブサイトへの謝罪広告の掲載、商品の回収などが命じられることがあります。これらの措置は、企業のブランドイメージや顧客からの信頼を大きく損なう可能性があり、その回復には多大な時間とコストがかかるでしょう。
事業とブランドを守る!商標法違反を未然に防ぐための3つの対策

対策1:【準備段階】事業開始前の徹底した商標調査
なぜ商標調査が必要不可欠なのか?
新しい事業を始める際、「この商品名やサービス名で大丈夫かな?」と不安に思ったことはありませんか?実は、すでに他社が同じ、あるいは似たような商標を登録しているかもしれません。そのまま事業を開始してしまうと、後々、商標権侵害として莫大な損害賠償を請求されたり、事業の停止を余儀なくされたりするリスクがあります。商標法違反は、事業の存続に関わる重大な問題となり得るため、事業開始前の徹底した商標調査はまさに「必須」と言えるのです。
自分でできる!J-Plat-Patを使った商標調査の基本ステップ
商標調査は、専門家に依頼すると費用がかかりますが、自分でできる方法もあります。特許庁が提供する「J-Plat-Pat(ジェイプラットパット)」という無料のデータベースを使えば、誰でも簡単に商標調査が可能です。基本的なステップは以下の通りです。
- J-Plat-Patにアクセスし、「商標検索」機能を選択します。
- 調査したい商標(文字やロゴ)と、その商標が使用される予定の商品・サービス区分(指定区分)を入力して検索します。
- 検索結果で、類似または同一の商標が登録されていないかを確認します。
- もし、類似商標が見つかった場合は、専門家への相談も検討しましょう。
詳しくはこちら
特許庁ウェブサイトでJ-Plat-Pat 商標検索の使い方をご確認いただけます。
対策2:【権利化】自社のブランドを守るための商標登録
商標登録の重要性とビジネス上のメリット
商標調査で問題がないことを確認したら、次に重要なのが「商標登録」です。商標登録をすることで、自社のブランド名やロゴを独占的に使用する権利が得られます。これにより、他社による無断使用を防ぎ、ブランドイメージの維持・向上につながります。また、将来的にライセンス契約を結んだり、事業譲渡やM&Aの際にブランド価値を高める資産となったりするなど、ビジネス上の大きなメリットが期待できます。
商標登録までの流れと期間・費用の目安
商標登録の手続きは、特許庁への出願から始まります。書類を作成し、指定された手数料を納付して出願します。その後、特許庁の審査官による審査が行われ、登録が認められれば、商標権が発生します。全体として、出願から登録までには、一般的に4ヶ月から1年程度の期間がかかります。費用の目安としては、出願料が1区分あたり12,000円、登録料が1区分あたり32,900円(合計44,900円)です。これに加えて、弁理士に依頼する場合は、別途報酬が発生します。
詳しくはこちら
特許庁「商標制度」をご確認ください。
対策3:【日常業務】他者の権利を侵害しないための注意点
広告やWebサイトで名称を使用する際のチェックリスト
事業を開始し、広告やWebサイトなどで自社のブランド名や商品名を使用する際も、他者の商標権を侵害しないよう細心の注意が必要です。以下のチェックリストを参考に、日常業務でのリスクを回避しましょう。
- 使用する名称は、自社で調査・登録したものであるか?
- 他社の著名な商標と混同を招くような名称ではないか?
- 広告コピーやデザインに、他者の登録商標を無断で使用していないか?
- 競合他社の名称を意図的に使用していないか?
取引先との契約書で確認すべき商標関連の条項
取引先との契約においても、商標権侵害のリスクは潜んでいます。特に、OEM(相手先ブランド製造)や共同開発、ライセンス契約などの場合、契約書の内容をしっかり確認することが重要です。
- 自社が使用する商標について、相手方が権利侵害をしないことを保証する条項はあるか?
- 相手方が使用する商標について、自社が権利侵害をしないことを確認する条項はあるか?
- 万が一、商標権侵害が発生した場合の責任分担は明確になっているか?
これらの条項を確認し、不明な点があれば、弁護士や弁理士に相談することをおすすめします。商標法違反は、商取引における信頼関係をも揺るがしかねない深刻な問題です。
もし商標権侵害の警告書が届いたら?冷静な初期対応ガイド

事業を営む上で、突然「商標権侵害の警告書」が届き、驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この警告書は、あなたの事業にとって致命的なリスクを招く可能性も秘めています。冷静に対応しなければ、意図せずとも法的なペナルティを受け、ブランドイメージを損なうことになりかねません。ここでは、警告書を受け取った際の具体的な対応方法と、事業を守るための初期対応ガイドを解説します。
絶対にやってはいけないNG対応
まず、警告書を受け取った際に、絶対に避けるべきNG対応を理解しておきましょう。
- 無視すること:警告書を無視することは、相手方の主張を認めたとみなされる可能性があります。これは、後々の交渉で非常に不利になります。
- 感情的に反論すること:冷静さを失い、感情的に反論したり、相手を非難したりすることは、事態を悪化させるだけです。法的な問題は、客観的な事実に基づいて冷静に進める必要があります。
- 安易に謝罪や賠償に応じること:事実関係を十分に確認しないまま、安易に謝罪したり、金銭を支払ったりすることは避けるべきです。後になって、不当な要求であったと判明した場合でも、一度受け入れたものを覆すのは困難です。
- 証拠を隠滅すること:もし、ご自身の使用に問題があったとしても、証拠を隠滅することは、さらなる法的な問題を引き起こす可能性があります。正直かつ誠実な対応が求められます。
警告書を受け取った直後に行うべき3つのこと
警告書が届いたら、まずは以下の3つのステップを冷静に、かつ迅速に行いましょう。
ステップ1:警告書の内容を正確に把握する
まず、警告書に記載されている内容を隅々まで注意深く読み込み、正確に理解することが重要です。具体的には、以下の点を確認しましょう。
- 差出人(権利者):誰が、どの商標権を持っているのかを確認します。
- 侵害されているとされる商標:具体的にどの商標(文字、ロゴ、マークなど)が、どのように侵害されていると主張されているのかを把握します。
- 侵害行為の指摘:自社のどの商品やサービスが、どのように商標権を侵害していると指摘されているのかを明確にします。
- 要求内容:相手方が具体的にどのような対応を求めているのかを確認します。要求されている金額や期日も必ず確認してください。
- 根拠となる商標登録番号:相手方が主張する商標登録の番号を控えておきましょう。これにより、その商標の有効性などを調査する手がかりとなります。
ステップ2:自社での商標の使用状況を調査・記録する
次に、警告書で指摘された内容について、自社での使用状況を詳細に調査し、記録することが重要です。
- いつから、どのように使用しているか:問題とされている商標を、いつから、どのような商品やサービスに使用しているのか、その経緯を調べます。過去の広告、ウェブサイト、商品パッケージ、契約書などを確認しましょう。
- 使用範囲:どの地域で、どのような媒体で、どのくらいの規模で使用しているのかを具体的に記録します。
- 類似性・混同の可能性:相手方が主張する商標と、自社の商標に、どの程度の類似性があるのか、そして、一般消費者が混同する可能性があるのかを客観的に検討します。
- 証拠となる資料の収集:調査した内容を裏付けるための資料(広告のコピー、ウェブサイトのスクリーンショット、商品カタログ、取引記録など)を漏れなく収集・整理します。
ステップ3:安易に回答せず、専門家に相談する
警告書の内容を把握し、自社の使用状況を調査したとしても、決して安易に相手方に回答したり、要求に応じたりしてはいけません。商標法違反は、事業に深刻な影響を与える可能性があるため、専門家の知見が不可欠です。まずは、警告書を受け取ってから、指定された回答期日までの期間を最大限に活用し、適切なアドバイスを得ることが、事業を守るための最善策となります。
弁理士?弁護士?相談すべき専門家の選び方とタイミング
商標権侵害に関する問題に直面した場合、誰に相談すべきか迷う方もいらっしゃるでしょう。結論から言うと、弁理士と弁護士、どちらも専門家ですが、得意分野が異なります。
- 弁理士:知的財産(特許、実用新案、意匠、商標)に関する専門家です。商標権の有効性や侵害の判断、登録戦略などに強みを持っています。商標権侵害の警告書に対する初期対応や、相手方との交渉の代理、さらには自社の商標登録の有無の確認などを依頼するのに適しています。
- 弁護士:法律全般の専門家です。紛争解決や訴訟、損害賠償請求など、法的な手続き全般に精通しています。もし、警告書への対応が難航し、訴訟に発展する可能性がある場合や、損害賠償請求を受けるような事態になった場合は、弁護士のサポートが不可欠となります。
相談のタイミングとしては、警告書を受け取った直後、まずは弁理士に相談することをお勧めします。弁理士は、商標法に関する専門知識が豊富であり、迅速かつ的確な初期対応のアドバイスをしてくれます。もし、事態が複雑化し、訴訟などの法的手続きが必要になった場合は、弁理士から弁護士へ連携を依頼することも可能です。早期に専門家へ相談することで、不要な紛争を回避し、あなたの事業とブランドを効果的に保護することができるのです。
商標は守りから攻めへ!ブランド価値を高める知財戦略

商標は、単に他社の模倣から自社ブランドを守るための「盾」ではありません。戦略的に活用することで、強力な「矛」となり、事業成長を加速させる武器にもなり得ます。
登録商標がもたらすライセンスビジネスの可能性
自社で大切に育て上げたブランド名やロゴは、それ自体に大きな価値があります。この価値を活かし、他社に商標の使用を許諾する「ライセンスビジネス」を展開することも可能です。例えば、アパレルブランドが化粧品メーカーに商標使用を許諾したり、キャラクターIPを他社商品に展開したりするケースがこれにあたります。商標法では、登録された商標権者は、自己の商標を他人に使用させることを許諾する(ライセンス契約を結ぶ)ことができます。これにより、自社で直接製造・販売を行わなくても、ロイヤリティ収入を得ることができ、事業の多角化と収益源の拡大につながります。しっかりと登録し、管理することで、こうしたリスクを回避しつつ、ブランド価値を収益化する道が開けます。
将来の事業展開を見据えた商標ポートフォリオの構築
現在の事業だけでなく、将来的に展開したい事業や、関連する分野の商標も視野に入れておくことが重要です。これは「商標ポートフォリオ」の構築と呼ばれ、事業の成長戦略と密接に関わってきます。例えば、ある企業が「〇〇コーヒー」という名称でカフェ事業を展開しているとします。将来的には、このブランドでレトルトコーヒーやコーヒー豆の販売、さらにはカフェのフランチャイズ展開なども考えているかもしれません。その場合、現時点では「カフェの営業」に関する商標登録だけでなく、将来的に展開する可能性のある「飲料の製造・販売」や「フランチャイズシステムによる飲食店の経営」といった区分(指定商品・指定役務)についても、事前に商標登録を検討しておくべきです。
将来の事業展開を見越した適切なポートフォリオを構築していれば、後々、他社に商標を先に登録されてしまい、事業展開ができなくなる、あるいは権利侵害を指摘されるといったリスクを回避できます。「知財戦略」は、単なるコストではなく、事業の持続的な成長とブランド価値の最大化を実現するための重要な投資です。自社の商標を「守り」から「攻め」へと転換し、ビジネスの可能性を広げていきましょう。
まとめ

商標法違反は、単なるペナルティにとどまらず、事業継続を揺るがす重大なリスクを伴います。しかし、事前に適切な対策を講じることで、これらのリスクを回避し、自社のブランド価値を守り、さらなる事業成長へと繋げることが可能です。
本記事では、商標法違反の具体的なリスク、罰則、そしてそれらを未然に防ぐための実践的な対策について解説してきました。特に、令和4年には警察が検挙した商標権侵害事犯(偽ブランド事犯等)は264件にのぼり、その影響の大きさが伺えます。商標登録の無効理由として、商標法第53条第2項、第77条第3項において準用される特許法第25条の規定に違反した場合、あるいは条約に違反して登録された場合などが挙げられます。これらの規定に抵触しないよう、登録前の調査や専門家への相談は不可欠です。
事業を守り、安定した成長を実現するためには、以下の点が重要となります。
- 事前の徹底的な調査:類似商標の有無を事前に調査し、抵触リスクを最小限に抑えます。
- 専門家への相談:商標登録や権利侵害に関する疑問は、弁理士などの専門家に相談しましょう。
- 自社商標の管理強化:登録した商標を適切に管理し、不正使用や侵害行為に対して迅速に対応できる体制を整えます。
- 従業員への周知徹底:商標法に関する知識を従業員に共有し、意図しない違反を防ぎます。
これらの対策を講じることで、貴社の貴重な知的財産である商標を守り、ブランドイメージを確立し、長期的な事業の成功へと繋げることができるでしょう。商標法違反のリスクを理解し、積極的な対策で、貴社のビジネスを未来へと導いてください。
詳しくはこちら
警察庁「偽ブランド品・海賊版対策」およびe-Gov法令検索「商標法」をご参照ください。
よくある質問
- Q1: うっかり他社の商標と似た名前を使ってしまった場合も、すぐに違反になりますか?
-
はい、故意でなくても商標法違反になる可能性があります。「知らなかった」は通用しないため注意が必要です。ただし、違反が成立するには、相手の商標権が登録されている商品やサービスと、あなたの事業内容が同じか似ている必要があります。もし心当たりがある場合は、すぐに使用を中止し、弁理士などの専門家に相談して、権利侵害にあたるかどうかを正確に判断してもらうことを強くおすすめします。
- Q2: ロゴだけでなく、商品のパッケージデザインなども商標法違反の対象になりますか?
-
はい、対象になります。商標はロゴや文字だけでなく、商品の形、パッケージデザイン、店舗の看板(位置商標)、特定の色使い(色彩商標)、CMで流れるサウンドロゴ(音商標)など、様々なものが登録対象となっています。自社が独自に使用しているデザインや音なども、他社の権利を侵害していないか確認し、自社の権利として保護できないか検討することが重要です。
- Q3: 商標調査は自分でもできますか?専門家に頼むと費用はどれくらいかかりますか?
-
はい、特許庁のデータベース「J-PlatPat」を使えば、誰でも無料で基本的な調査が可能です。しかし、類似範囲の判断は専門知識が必要で、見落としのリスクもあります。確実性を求めるなら、弁理士への依頼が安心です。調査費用は依頼範囲によりますが、数万円程度からが一般的です。事業開始前の重要な投資と考え、専門家の活用を検討しましょう。
- Q4: 商標権侵害の警告書が届きました。無視したらどうなりますか?
-
警告書を無視することは絶対に避けてください。無視を続けると、相手方が裁判所に訴訟を起こし、商品の販売差止や損害賠償請求に発展する可能性が非常に高まります。まずは冷静に書面の内容を確認し、すぐに商標に詳しい弁護士や弁理士に相談してください。専門家に対応を依頼することで、不利益を最小限に抑え、適切な解決策を見つけることができます。
- Q5: これから商標登録を考えています。だいたいどれくらいの期間と費用がかかるのでしょうか?
-
一般的に、特許庁に出願してから登録されるまでの期間は、半年から1年程度が目安です。費用は、特許庁に支払う印紙代と、弁理士に依頼する場合の依頼料の合計で決まります。1つの区分(商品・サービスのカテゴリー)で出願する場合、総額で十数万円からが相場となります。これは、あなたのブランドを模倣から守り、事業を安定させるための重要な投資です。
- Q6: 海外で商品を販売する場合、日本の商標登録だけで保護されますか?
-
いいえ、保護されません。商標権は、登録した国の中でのみ効力を持つ「属地主義」という原則があります。そのため、日本で商標登録していても、アメリカや中国など海外で事業展開をする場合は、その国ごとに商標登録の手続きが必要です。海外進出を計画しているなら、早い段階からグローバルな知財戦略を立て、現地の専門家と連携して権利を確保しましょう。
参考文献
- https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/index.html
- https://www.jpo.go.jp/system/trademark/index.html
- https://faq.inpit.go.jp/FAQ/post-4.html?categories%5B%5D=81
- https://www.jpaa.or.jp/intellectual-property/trademark/
- https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000127
- https://www.jpo.go.jp/support/ipr/kenrishingai.html
- https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/index.html
- https://www.inpit.go.jp/consul/index.html