商標の類否判断基準を解説!ビジネスリスクと回避策の全て
目次
「せっかく考えた会社名や商品名が、もしも他の会社と似ていたらどうしよう…」そんな不安を感じていませんか?知らずに似た商標を使ってしまうと、思わぬトラブルに巻き込まれ、大切なビジネスが止まってしまうかもしれません。
この記事では、あなたのブランドを守るために知っておきたい「商標の類否判断基準」を、中学生でもわかるように丁寧に解説します。どうすればリスクを避け、安心して事業を進められるのか、具体的な回避策もご紹介。法的トラブルを防ぎ、ブランド価値をしっかり守るための知識を身につけましょう。この記事を読めば、あなたのビジネスを安全に、そして確実に成長させるための道筋が見えてくるはずです。
この記事は以下のような人におすすめ!
- 商標の類否判断の基本と、ビジネスでの落とし穴が理解できます。
- 商標が似ていると判断される3つの基準と具体例がわかります。
- 類似商標が原因で起こる深刻なビジネスリスクを理解できます。
- 類似商標トラブルを回避する具体的な3ステップが身につきます。
- 専門家への相談が必要な場面と、そのメリットを理解できます。
記事を読み終える頃には、商標の類似性によるリスクを未然に防ぎ、自社のビジネスを安全に成長させる具体的な判断基準と対策を理解できるようになります。
この記事の監修者
岩原 将文
株式会社IP-RoBo(TM-RoBo運営会社) CEO 弁護士
主として、特許、著作権その他の知的財産権に関する相談、契約、訴訟等を行う。大学・大学院時代には、機械学習に関する研究を行っていた。
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商標の類否判断とは?知らないと危険なビジネス上の落とし穴

商標の類否判断とは?権利範囲を決める「ものさし」
商標の類否判断とは、自社が使おうとしているマークやネーミングが、すでに他社が登録している商標と「似ている」と評価されるかどうかを判定するプロセスのことです。商標法第4条第1項第11号では、他人の登録商標やこれに類似する商標を、同一・類似の商品・役務について使用するものは登録できないと定められており、また商標法第36条・第37条により、登録商標と類似する商標を無断で使用する行為は商標権侵害として、差止請求や損害賠償請求の対象になります。つまり、「似ているかどうか」の判断は、出願した商標が登録できるか、そして安心して使い続けられるかを左右する、ビジネス上の極めて重要な分岐点なのです。
「自社では似ていないつもり」は通用しない
類否判断で多くの経営者が誤解しやすいのが、「うちの商標と他社の商標は、見た目も読み方も全然違うから大丈夫」という自己流の判断です。しかし実際の類否判断は、特許庁の審査官や裁判所が「外観(見た目)」、「称呼(読み方)」、「観念(意味合い)」の3つの観点を総合的に評価して行います。たとえ片方の要素だけ似ているケースでも、需要者が同じ会社の商品・サービスと誤認混同するおそれがあれば、類似と判断されることがあります。特許情報プラットフォームを運営するINPITも、「商標の類否は、出願商標及び引用商標がその外観、称呼又は観念等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に観察し、出所混同のおそれがあるか否かにより判断される」と説明しており、自社の感覚だけで結論を出すのは危険です。
詳しくはこちら
INPIT FAQ「商標の類似の判断はどのように行うのですか。」をご参照ください。
事業立ち上げ後に類似指摘を受ける最悪のシナリオ
商標の類似性を軽く見たまま事業を進めると、後から取り返しのつかない事態に発展することがあります。代表的なのが、以下のような流れです。
- 店舗看板・パッケージ・ECサイト・SNS・名刺・パンフレットなどを一斉に作り込んだ後で、類似商標権者から警告書が届く
- 使用差止請求を受け、すべての販促物を作り直し、ブランド名そのものを変更せざるを得なくなる
- 過去の売上に対して損害賠償を請求され、本業の利益が吹き飛ぶ
- 顧客や取引先に「あの会社、商標トラブルを起こした会社」というイメージが残り、信用が落ちる
こうしたリスクは、出願前にきちんと類否判断のロジックを理解し、正しい調査と判断ができていれば、ほとんど未然に防げます。本記事では、商標が「類似する」と判断される具体的な3つの基準と引き起こされる5つのビジネスリスク、トラブルを回避する3ステップの対策、そして専門家への相談タイミングまで、実務目線で詳しく解説していきます。
商標が「類似する」と判断される3つの基準と具体例

ビジネスにおいて、他社の商標と似たような名称やロゴを使ってしまうと、意図せず商標権侵害のリスクを招く可能性があります。これは、ブランド価値の低下や、最悪の場合、訴訟問題に発展する恐れも。では、具体的にどのような場合に商標が「類似している」と判断されるのでしょうか?特許庁が定める基準と、具体的な事例を交えながら解説します。
- 外観の類似:文字や図形の「見た目」が似ているケース
- 称呼の類似:読み方や「響き」が似ているケース
- 観念の類似:言葉が与える「意味・イメージ」が似ているケース
- 【重要】商標だけでなく「商品・サービス」の類似性も判断される
外観の類似:文字や図形の「見た目」が似ているケース
商標の類似性は、まず「見た目」がどれだけ似ているかで判断されます。これは、文字の形、デザイン、図形の配置などが、消費者に誤認を与えるほど似ているかどうかを評価するものです。たとえ一部の文字が異なっていても、全体的な印象が似ていれば類似とみなされることがあります。
- 「STAR」と「SIAR」:文字の形状や配置が非常に似ており、特に視覚的に素早く認識される場合、消費者が混同してしまう可能性があります。このような場合、外観の類似性が認められることがあります。
- 図形やロゴの構成・デザインが似ている:動物のシルエットや、特定の形状の組み合わせなどが、消費者に同じようなイメージを与える場合です。ロゴデザインはブランドの顔となるため、類似には細心の注意が必要です。
称呼の類似:読み方や「響き」が似ているケース
次に、「音」に着目した類似性です。商標は、声に出して呼ばれたり、耳にしたりすることで認識されることが多いため、読み方や響きが似ている場合も類似と判断されます。たとえ文字の見た目が異なっていても、発音が似ているだけで混同が生じる可能性があるのです。
- 「ビューティー」と「ビューティ」:最後の「ー」の有無だけが異なります。しかし、発音したときの響きは非常に近く、消費者がどちらの商標なのかを正確に識別するのは難しい場合があります。このようなわずかな違いであっても、類似と判断されるケースは少なくありません。
- 「ABC」と「エービーシー」:アルファベットの「ABC」と、それをカタカナで読んだ「エービーシー」も、称呼の類似性が認められる典型例です。どちらも同じ意味合いを持ち、発音したときの音も非常に近いため、消費者が混同する可能性が高いと考えられます。
観念の類似:言葉が与える「意味・イメージ」が似ているケース
商標が持つ「意味」や「イメージ」が似ている場合も、類似と判断されます。これは、言葉が持つ本来の意味や、消費者に与える連想などが共通しているケースです。たとえ見た目や読み方が異なっていても、消費者が同じような商品やサービスであると誤認する可能性がある場合に適用されます。
- 「王様」と「キング」:それぞれ日本語と英語ですが、どちらも「支配者」や「最高位の人物」といった共通の意味を持っています。そのため、これらの言葉を商標として使用した場合、消費者は同じようなイメージを抱き、混同する可能性が高いと考えられます。
- 「LION」とライオンのイラスト:「LION」という文字商標と、ライオンのイラストを描いた商標も、観念の類似性が認められる場合があります。「LION」という言葉は、一般的に「百獣の王」としての力強さや威厳といったイメージを連想させます。ライオンのイラストも同様のイメージを与えるため、消費者が混同する可能性が指摘されます。
【重要】商標だけでなく「商品・サービス」の類似性も判断される
商標の類似性判断において、最も重要なポイントの一つが、「指定商品・指定役務」の類似性です。たとえ商標自体が似ていなくても、提供する商品やサービスが似ている場合、消費者が「同じ会社が提供しているのではないか?」と誤認する可能性があります。特許庁は、「類似商品・役務審査基準」を策定しており、これにより、類似関係にあると推定される商品や役務をグルーピングしています。
商標の類似判断は、これらの3つの基準(外観、称呼、観念)と、指定商品・役務の類似性を総合的に考慮して行われます。
詳しくはこちら
特許庁「類似商品・役務審査基準」および INPIT FAQ「商標の類似の判断はどのように行うのですか。」をご参照ください。
【事例で解説】類似商標が引き起こす5つの深刻なビジネスリスク

せっかく立ち上げたビジネス、その名前やロゴが他社の商標と似ていたために、予期せぬトラブルに巻き込まれてしまうケースは少なくありません。「うちの商標は大丈夫だろう」と安易に考えていると、事業の根幹を揺るがす重大なリスクを招く可能性があります。ここでは、類似商標が引き起こす具体的な5つのリスクを、事例を交えながら解説します。
- リスク1:商標登録が拒絶され事業計画が遅延する
- リスク2:権利者から商標の使用差止請求を受ける
- リスク3:多額の損害賠償請求に発展する
- リスク4:時間とコストをかけて築いたブランド価値が毀損する
- リスク5:WebサイトやSNSアカウントの変更を余儀なくされる
リスク1:商標登録が拒絶され事業計画が遅延する
新しい商品やサービスで商標登録を申請したものの、既存の類似商標が存在することを理由に拒絶されてしまうことがあります。これは、商標法第4条第1項第11号に定められている、「他人の登録商標又はこれに類似する商標であって、その指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品・役務について使用をするもの」に該当する場合です。例えば、食品業界で「あま〜い果実」という名称を商標登録しようとしたところ、既に「あま〜いフルーツ」という類似商標が登録されていた場合、拒絶される可能性が高くなります。これにより、事業開始のタイミングが大幅に遅れたり、ブランド名を一から考え直す必要が生じたりと、事業計画に深刻な遅延をもたらします。
詳しくはこちら
INPIT FAQ「商標の類似の判断はどのように行うのですか。」をご参照ください。
リスク2:権利者から商標の使用差止請求を受ける
もし、知らず知らずのうちに他社の類似商標を使用していた場合、その商標の権利者から使用をやめるよう請求される(使用差止請求)ことがあります。これは、商標法第36条に基づき、権利者が侵害行為の停止を求めることができるためです。例えば、アパレルブランドで「クールスタイル」という名称の商品を販売していたところ、既に「クール&スタイル」という類似商標を登録しているアパレル企業から、販売停止を求められるといったケースが考えられます。この場合、在庫の処分や、販売チャネルの変更など、迅速な対応が求められ、事業運営に大きな混乱が生じます。
リスク3:多額の損害賠償請求に発展する
商標権侵害が認められた場合、権利者は損害賠償を請求することができます。商標法第38条では、商標権侵害により生じた損害の額について、譲渡数量に応じた利益額(同条第1項)や、侵害者が侵害行為により得た利益の額(同条第2項)、使用料相当額(同条第3項)から算定・推定できる旨が定められています。例えば、不正に類似商標を使用し、年間1,000万円の利益を上げていた場合、その利益相当額、あるいは権利者が被った損失額が賠償請求の対象となり得ます。なお、日本の商標法には米国のような懲罰的損害賠償(数倍賠償)の制度はありませんが、悪質な侵害に対しては、信用回復措置請求(商標法第39条が準用する特許法第106条)や刑事罰(商標法第78条等)の対象になり得ます。これにより、企業の財務状況が著しく悪化し、最悪の場合、倒産に至るリスクも否定できません。
リスク4:時間とコストをかけて築いたブランド価値が毀損する
長年、時間と多大なコストをかけて培ってきたブランドイメージや信頼が、類似商標問題によって一瞬にして失われることがあります。消費者は、似たような商標の商品やサービスに混乱し、「どちらが本物か」「品質は大丈夫か」といった疑念を抱きがちです。例えば、ある健康食品メーカーが「元気の源」というブランドで長年愛されてきたにも関わらず、類似の「元気の源泉」という商標の製品が市場に出回った場合、消費者の間で混同が生じ、本来のブランドへの信頼が揺らぐ可能性があります。一度失われたブランド価値の回復には、さらに多くの時間とコストがかかることを覚悟しなければなりません。
リスク5:WebサイトやSNSアカウントの変更を余儀なくされる
商標権侵害により、使用差止請求や訴訟に発展した場合、単に商品名やロゴを変更するだけでなく、Webサイトのドメイン名やSNSアカウント名なども変更せざるを得なくなることがあります。例えば、「ABC-Shop.com」というドメイン名でECサイトを運営していたところ、類似商標権者から「ABC」の部分が商標権侵害にあたると指摘された場合、ドメイン名の変更や、サイト全体のデザイン、コンテンツの修正が必要になります。SNSアカウントも同様に、ブランド名やロゴを使用している場合、変更を余儀なくされ、フォロワーへの告知や再設定など、煩雑な作業が発生します。これらの変更は、SEOへの影響や、既存の顧客への混乱も招きかねず、事業運営に多大な影響を与えます。
類似商標トラブルを回避する3ステップの対策
「この商標、大丈夫かな?」そんな不安を抱えているビジネス担当者や経営者の皆様へ。せっかく苦労して作り上げたブランド名やロゴが、後々、第三者の商標と似ていると指摘され、使用できなくなってしまうリスクは避けたいですよね。商標権侵害となってしまうと、損害賠償請求や使用差止請求を受けるだけでなく、ブランドイメージの失墜にも繋がりかねません。ここでは、類似商標トラブルを未然に防ぎ、安心して事業を成長させるための具体的な3ステップの対策を、政府公式情報も交えながら分かりやすく解説します。
ステップ1:【初心者向け】J-PlatPatを使った商標調査
商標調査の第一歩は、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を活用することです。まずは、ご自身の検討している商標と似たものが既に登録されていないかを確認しましょう。
称呼(読み方)での検索を必ず行う
商標の類似性を判断する上で、最も重要な要素の一つが「称呼」、つまり商標の読み方です。たとえ見た目が違っても、読み方が似ているだけで、消費者は同じ商品・サービスだと誤認する可能性があります。例えば、「アサヒ」と「アサヒ」は、見た目も読み方も同じで、類似性は高いと判断されます。J-PlatPatでは、商標の名称だけでなく、その読み方(カタカナ表記など)でも検索することができます。検討している商標の読み方で、類似するものが登録されていないか、必ず確認しましょう。
図形商標の場合は図形等分類を調べる
ロゴマークなどの図形商標の場合、見た目の類似性が重要になります。J-PlatPatでは、図形商標を分類するための「図形等分類」というシステムがあります。これにより、似たような図形商標を効率的に検索することができます。例えば、太陽のマークであれば、太陽を表す分類コードで検索することで、類似のマークを見つけやすくなります。図形商標を検討されている場合は、この図形等分類を活用した調査も行いましょう。
詳しくはこちら
特許庁「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」の利用ガイドをご参照ください。
ステップ2:調査結果から類似性を判断する際のチェックポイント
J-PlatPatでの調査結果を踏まえ、具体的にどのような点が類似していると判断されるのか、チェックポイントを確認しましょう。
外観・称呼・観念の3つの視点で比較する
商標の類似性は、主に「外観(見た目)」「称呼(読み方)」「観念(意味合い)」の3つの視点から総合的に判断されます。これは、商標法第4条第1項第11号に基づく類否判断の考え方で、商標審査基準では「外観、称呼又は観念のいずれかの点で類似することにより、商品・役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがある商標」を類似商標として取り扱うとされています。
- 外観:「リンゴ」の文字+リンゴの図形と「林檎」の文字+リンゴの図形は、見た目が漢字かひらがなかで異なりますが、同じ「リンゴ」を表す図形であり、外観上の類似性も高いと判断されることがあります。
- 称呼:「アップル」と「アプル」は、読み方が似ています。
- 観念:「太陽」と「サン」は、意味が同じ(太陽を意味する外国語)であり、観念上の類似性があると判断されます。
詳しくはこちら
INPIT FAQ「商標の類似の判断はどのように行うのですか。」をご確認ください。
商品・サービス(指定商品・役務)の区分が同一・類似か確認する
商標権は、登録された商品・サービス(指定商品・役務)の範囲で効力を持ちます。たとえ商標が似ていても、提供する商品・サービスが全く異なるものであれば、類似商標とはみなされない場合があります。しかし、指定商品・役務が「類似」していると判断されると、やはり商標権侵害となる可能性があります。特許庁では、類似関係にあると推定される商品・役務をまとめた「類似商品・役務審査基準」を公表しています。ご自身の商標が対象とする商品・サービスと、類似商標が対象とする商品・サービスが、この基準で見て類似しているかどうかを確認することが非常に重要です。
詳しくはこちら
特許庁「類似商品・役務審査基準」をご確認ください。
ステップ3:類似を避けるためのネーミング・ロゴ作成のコツ
類似商標のリスクを最小限に抑えるためには、最初からオリジナリティのあるネーミングやロゴデザインを心がけることが大切です。
- オリジナリティのある造語を考える:既存の言葉や一般的な単語をそのまま使うのではなく、オリジナリティのある造語を考えるのが最も確実な方法の一つです。例えば、「Google」や「Amazon」のような、それ自体に意味を持たない、あるいは新しい意味を持たせた造語は、類似商標が生まれにくく、独自のブランドイメージを構築しやすい傾向があります。造語を作る際は、響きの良さや覚えやすさも考慮しましょう。
- 意味の異なる外国語を組み合わせる:外国語をそのまま使うのではなく、意味の異なる複数の外国語を組み合わせることで、ユニークな響きと意味を持つ商標を作成できます。例えば、ラテン語やギリシャ語などの古典的な言語から単語を選び、それを組み合わせることで、知的な印象や高級感を演出することも可能です。ただし、その外国語が持つ本来の意味や、文化的な背景にも配慮が必要です。
- ロゴデザインで視覚的な差別化を図る:ネーミングが似ていたとしても、ロゴデザインで明確な差別化を図ることは非常に有効です。独自のシンボルマーク、配色、フォントなどを採用することで、視覚的に他社との違いを際立たせることができます。例えば、同じ「スター」というモチーフでも、星の形、数、配置、色などを工夫することで、全く異なる印象のロゴになります。プロのデザイナーに依頼することも、オリジナリティの高い、効果的なロゴを作成する上で有効な手段です。
これらの対策を講じることで、商標の類似性による法的リスクやブランド価値の毀損を未然に防ぎ、安心して事業を推進していくことができるでしょう。
商標の類否判断は専門家(弁理士)に相談すべき?

商標の類否判断は、自社のビジネスを守る上で非常に重要です。しかし、その判断基準は複雑で、専門的な知識がなければ正確に行うことは困難です。特に、ビジネスの成長に不可欠なネーミングやロゴを商標登録する際には、予期せぬトラブルを避けるためにも、専門家への相談を強くおすすめします。
弁理士への相談を検討すべき具体的なケースとタイミング
自社での調査結果に確信が持てない場合
商標登録を検討する際、まず自社で類似商標がないか調査を行うことは一般的です。しかし、特許庁が公表している「商標の類似の判断はどのように行うのですか。」によれば、類似性の判断は「称呼(呼び方)」「外観(見た目)」「観念(意味合い)」の3つの観点から総合的に行われます。これらの観点から、自社での調査結果に少しでも不安がある場合や、判断に迷う場合は、専門家である弁理士に相談することで、より確実な判断を得られます。
類似の先行商標が見つかったが、登録を進めたい場合
調査の結果、類似している可能性のある先行商標が見つかったとしても、諦める必要はありません。商標法第4条第1項第11号では、同一または類似の商品・役務について同一または類似の商標であることを拒絶理由としていますが、必ずしも登録が不可能になるわけではありません。弁理士は、先行商標との違いを明確にし、登録の可能性を高めるための戦略(例えば、指定商品・役務の限定や、拒絶理由通知に対する意見書・手続補正書の提出など)を提案できます。
事業の根幹となる重要なネーミング・ロゴの場合
自社のビジネスの顔となる商標は、そのブランド価値に直結します。もし、そのネーミングやロゴが後々、他社の商標権を侵害していると判断された場合、商標の使用差し止めや損害賠償請求といった深刻な法的リスクを負う可能性があります。最悪の場合、ブランドイメージの失墜や、多額の賠償金が発生し、事業継続が困難になることも考えられます。事業の根幹に関わる重要な商標については、商標登録の段階から弁理士に依頼し、リスクを未然に防ぐことが賢明です。
調査から登録まで弁理士に依頼する3つのメリット
- メリット1:専門的な視点による高精度な調査
弁理士は、最新の法令や審査基準、過去の事例に基づき、商標の類似性を多角的に評価します。特許庁が公表している「類似商品・役務審査基準」は、類似関係にある商品・役務をグルーピングし、検索コードを付与していますが、この基準の解釈や適用には専門知識が不可欠です。弁理士は、この基準を理解し、自社の商標が登録可能かどうか、また、どのようなリスクがあるのかを正確に判断します。 - メリット2:拒絶された場合の対応(意見書・手続補正書)も任せられる
商標登録出願が拒絶された場合、その理由を分析し、適切に対応する必要があります。弁理士は、拒絶理由通知に対して、法的な根拠に基づいた意見書を作成したり、出願内容を補正したりするなど、登録の可能性を高めるための戦略的な対応を行います。これらの手続きは専門性が高いため、ご自身で行うのは困難な場合が多く、弁理士に依頼することでスムーズに進めることができます。 - メリット3:権利侵害のリスクを最小限に抑えられる
弁理士は、出願前の段階で、類似商標の調査を徹底的に行います。これにより、他社の権利を侵害してしまうリスクを大幅に低減できます。また、万が一、類似商標が存在した場合でも、弁理士はその商標の登録状況や使用状況などを調査し、貴社のビジネスにとって最適な回避策(例えば、代替ネーミングの提案や、相手方との交渉など)をアドバイスしてくれます。これにより、後々の紛争リスクを最小限に抑え、安心して事業を展開できます。
信頼できる弁理士・特許事務所の選び方
商標登録の成功は、信頼できる弁理士・特許事務所選びにかかっています。以下の点を参考に、ご自身のビジネスに合った専門家を見つけましょう。
- 商標登録の実績が豊富か:過去の相談実績や、手がけた商標登録の件数などを確認しましょう。
- 専門分野に強いか:貴社の事業内容や取り扱う商品・役務に関連する分野の商標登録に強みを持つ弁理士を選ぶと、より的確なアドバイスが期待できます。
- コミュニケーションが円滑か:相談しやすい雰囲気か、説明が分かりやすいかなど、相性も重要です。初回の相談料が無料の事務所もありますので、複数事務所に相談してみるのも良いでしょう。
- 費用体系が明確か:調査費用、出願費用、成功報酬など、事前に費用について明確な説明を受け、納得できるか確認しましょう。
まとめ

商標の類否判断は、ビジネスを成功させる上で避けては通れない重要なプロセスです。類似商標によるトラブルは、ブランドイメージの低下や多額の損害賠償につながるリスクをはらんでいます。
特許庁は、商標の「称呼(呼び方)」、「外観(見た目)」、「観念(意味合い)」の3つの要素から総合的に類似性を判断しています。例えば、「リンゴ」と「林檎」は称呼が同じであるため、類似と判断される可能性が高いです。また、類似商品・役務審査基準は、どのような商品やサービスが類似しているかの目安となります。この基準は国際分類第13-2026版に対応しており、常に最新の情報に基づいた判断が求められます。商標法第4条第1項第11号では、「他人の登録商標と類似する商標」は登録できないと定められています。
自社ブランドの価値を守り、将来のビジネスリスクを回避するためには、専門家への相談も視野に入れ、慎重な商標戦略を立てることが不可欠です。
詳しくはこちら
特許庁「類似商品・役務審査基準」および INPIT FAQ「商標の類似の判断はどのように行うのですか。」をご参照ください。
商標の類似性に関するよくある質問(Q&A)
- Q1: 見た目や読み方が少し違うだけでも「類似」と判断されることはありますか?
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はい、類似と判断される可能性は十分にあります。商標の類似性は「外観(見た目)」「称呼(読み方)」「観念(意味)」の3つの基準で総合的に判断されます。例えば、大文字と小文字の違い(例:「ABC」と「abc」)や、ひらがなとカタカナの違い(例:「さくら」と「サクラ」)だけでも、読み方や意味が同じであれば類似と見なされることが多いです。自己判断は危険なので、少しでも不安があれば専門家に相談しましょう。
- Q2: ロゴマークと文字(ネーミング)、どちらが類似判断でより重要視されますか?
-
どちらか一方だけが重要ということはなく、両方の要素を総合的に見て判断されます。ロゴマークは主に「外観(見た目)」で、文字は「外観」「称呼(読み方)」「観念(意味)」で比較されます。例えば、ロゴの見た目が全く違っていても、そこに含まれる文字の読み方が同じであれば、類似と判断されるケースは少なくありません。ロゴと文字、両方の側面からチェックすることが不可欠です。
- Q3: 自分で商標調査をして似たものが見つかりませんでした。これで安心して使えますか?
-
ご自身での調査は第一歩として非常に重要ですが、それだけでは万全とは言えません。調査には専門的な知識が必要で、読み方が特殊な商標や、意味合いが似ている商標など、専門家でなければ見つけにくいケースが存在します。ビジネスを確実に守るためには、最終的な使用開始の前に、弁理士などの専門家に調査を依頼し、プロの視点から確認してもらうことを強くおすすめします。
- Q4: もし他社から「商標が似ている」と警告されたら、まず何をすべきですか?
-
まずは慌てずに、送られてきた警告書の内容をよく確認してください。そして、自己判断で返答したり、無視したりすることは絶対に避けてください。すぐに商標に詳しい弁理士へ相談しましょう。専門家が相手の権利の有効性や、本当に類似しているかなどを客観的に分析し、最適な対応策を提案してくれます。迅速な専門家への相談が、問題を最小限に抑えるための鍵となります。
- Q5: 専門家(弁理士)への相談費用は、どのくらいかかりますか?
-
費用は相談内容や依頼範囲によって様々ですが、多くの特許事務所では初回相談を無料で行っています。商標が類似しているかどうかの簡単な調査であれば数万円から、正式な出願手続きまで含めると十数万円程度が一般的な目安です。万が一トラブルになってからの対応費用と比べれば、事前の調査・出願費用ははるかに安価です。まずは無料相談を活用し、見積もりを取ってみるのが良いでしょう。
- Q6: まだ誰も商標登録していない名前なら、似ていても自由に使っていいのでしょうか?
-
いいえ、注意が必要です。相手がまだ登録していなくても、先にその名称を使いビジネスをしていて広く知られている場合(これを「周知性がある」と言います)、「不正競争防止法」という法律で問題になる可能性があります。また、相手があなたより先に出願すれば、あなたが使用を中止せざるを得なくなることも。安心して事業を続けるため、使用開始前にご自身の名前として調査・出願を済ませておくことが重要です。
参考文献
- https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/kijun/index.html
- https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/index.html
- https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
- https://www.inpit.go.jp/katsuyo/index.html
- https://www.jpaa.or.jp/intellectual-property/trademark/
- https://www.jpo.go.jp/system/basic/trademark/index.html