2021.03.09 サービス 弁理士MM

「不使用取消審判の権利濫用」と認められるには

こんにちは、弁理士MMです。
今回は、不使用取消審判*で請求権の権利濫用が認められた事例をご紹介します。

 

もうだいぶ前ですが、不使用取消審判の請求人適格*が何人でも可能と認められました。不使用商標を見つけたら、誰でも誰にでも審判請求をしていいのです。実務的には、特許事務所の事務員さんや所長の奥様をダミーにして審判請求することなどもあります。

しかし商標権者としては、見ず知らずの人から突然取消審判を請求されたらいい気分はしません。特に、数少ない登録商標の一つ一つに思い入れの強い中小企業の場合、「使ってなくたって大切な商標だ!こんな審判請求は無効だ!」と言いたくなるものです。とはいえ、何人でも請求が認められる制度ですから、権利濫用の主張しても、審判請求が却下されることはほぼありません。

 

ご紹介するShapes事件は、この権利濫用の主張が認められたごく稀なケースです。

この事件、当初の不使用取消審判は商標権者Sが何ら答弁せず、あっけなく商標登録が取り消された一見よくある審判でした。それもそのはず、商標権者Sは審判請求人Kと共謀して、最初から商標登録を取り消すつもりだったのです。

 

この審決に再審を請求したのが旧商標権者Oです。トレーニングジム「Shapes」を経営していたOは、フランチャイズ事業を行うSとライセンス契約をして事業拡大を図り、顧問料をもらうことを条件に、商標権も含めた営業権すべてをSに譲渡してしまったのです。しかし、営業権譲渡後も「Shapes」の名でジムを運営するOに不信感を抱いたSは、ほどなくOに顧問契約の解除を求めたのです。

商標権も営業権も譲渡したのに顧問料がもらえないなんて・・・憤慨したOは、営業権の譲渡契約解除と商標権移転登録の抹消手続を求める訴えを提起しました。しかしSは、Oから譲り受けた商標とは別に、類似の商標を自ら出願・登録していたので、譲り受けた商標は共謀者Kに不使用取消審判を請求させ、商標登録を取り消してしまったのです。

 

Oが請求した再審は、いったんは請求棄却の審決がされたものの、前述の別訴、営業権譲渡契約解除と商標権移転登録抹消手続を認める判決がされたことで、知財高裁で審決取消の判決がされ、差戻再審で「審判請求権を濫用する不適法な請求」であったとして、不使用取消審判の請求を却下する審決がされました。

 

商標権者Sと旧商標権者O、双方の言い分の是非はともかく、不使用取消審判に関しては明白な権利濫用です。逆にこのような詐害要素がなければ、不使用取消審判請求で権利濫用の主張が認められることはまずありません。「こんな審判請求は無効だ!」と徒労に終わる主張をするより、大切な登録商標は適切に使用して権利を守ることが肝要です。

 

*不使用取消審判…登録商標が一定期間使用されていないことを理由に、その商標登録を取り消すことができる制度
*請求人適格…審判を請求することができる者 (参考:関西弁理士会

 

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[ 執筆者 プロフィール ]
弁理士MM
国内商標専門の弁理士として、特許事務所在籍
TM-RoBo開発にも参画中

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