【企業向け】模倣品対策の基本と法的手段・予防策を徹底解説
目次
模倣品の流通は年々拡大し、ブランドの信頼や売上に深刻な打撃を与えています。自社の商品やロゴが無断でコピーされたとき、どの権利で、どの順序で動けばよいのか分からず悩む担当者は少なくありません。本記事では、模倣品対策の基本から、商標権・意匠権・不正競争防止法を使った法的手段、税関での輸入差止申立て、被害を未然に防ぐ予防策までを、知財実務の視点で体系的に解説します。発見から対応、予防までの全体像をつかみ、自社ブランドを守る具体的な一手を見つけてください。

この記事は以下のような人におすすめ!
- 模倣品を発見してどう対応すればよいか分からない人
- 商標権・意匠権・不正競争防止法の使い分けを知りたい人
- 税関の輸入差止申立てや予防策を知りたい人
記事を読み終える頃には、模倣品を発見してから対応・予防までの全体像をつかみ、自社ブランドを守る具体的な一手を実行できるようになります。
この記事の監修者
岩原 将文
株式会社IP-RoBo(TM-RoBo運営会社) CEO 弁護士
主として、特許、著作権その他の知的財産権に関する相談、契約、訴訟等を行う。大学・大学院時代には、機械学習に関する研究を行っていた。
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模倣品対策とは?知財視点で押さえる基本と被害の実態

模倣品対策とは、自社のブランドや製品を無断でまねた商品の製造・流通・販売を防ぎ、被害を最小化する取り組み全体を指します。まずは模倣品の種類と被害の規模を正しく理解することが、適切な対策を選ぶ出発点になります。
模倣品・偽造品・海賊版の違いを整理する
模倣品とは、他社の商品名やロゴ、デザインを無断でまねて作られた商品の総称です。このうち、正規ブランドの商標やロゴをそっくり付けた商品は偽造品と呼ばれ、音楽や映像、ソフトウェアなどの著作物を無断で複製したものは海賊版として区別されます。対策を考えるうえでは、どの知的財産が侵害されているかによって使える法律が変わります。そのため、まず自社の被害がどの類型に当たるかを見極める作業が欠かせません。
模倣品被害の実態と最新データ
模倣品被害は拡大傾向にあり、規模を問わず対策が求められています。財務省によると、2024年の税関における知的財産侵害物品の輸入差止件数は33,019件に達し、公表を開始した1987年以来で過去最多を更新しました。前年比は4.3%増で、仕出国別では中国が全体の80.6%(26,604件)を占めています。インターネット通販や越境ECの普及により、個人が海外サイトで購入した模倣品が税関で差し止められる事例も増えており、大企業だけでなく中小企業やスタートアップのブランドにも被害が及んでいます。詳細は財務省「令和6年の税関における知的財産侵害物品の差止状況」に公表されています。
模倣品対策に使える知的財産権と不正競争防止法

模倣品に法的に対抗するには、どの権利が侵害されているかを特定し、根拠となる法律を選ぶことが重要です。代表的な手段は、商標権・意匠権による権利行使と、登録がなくても使える不正競争防止法の3つに整理できます。
商標権でブランド名・ロゴを守る
商標権とは、登録した商標を指定商品・役務について独占的に使用できる権利です(商標法第25条)。商標権者は、無断で同一・類似の商標を使う相手に対し、商標法第36条にもとづいて侵害の停止や予防、侵害品の廃棄を請求できます。さらに同法第37条第1号では、登録商標に類似する商標の使用なども侵害とみなすと定められており、完全に同一でなくても対応できる場合があります。ブランド名やロゴの模倣に対する、もっとも基本的な武器が商標権です。具体的な進め方は商標権侵害への対応策もあわせて確認しておくと安心です。
詳しくはこちら
e-Gov法令検索「商標法(第25条・第36条・第37条)」をご確認ください。
意匠権で製品デザインを守る
意匠権とは、製品の形状や模様、色彩といったデザインを独占的に保護する権利です。製品の見た目をそっくりまねた模倣品に対しては、意匠権にもとづく差止請求や損害賠償が有効な手段になります。商標がブランド名やロゴを守るのに対し、意匠は製品そのものの外観を守る点が異なります。両者は保護対象が違うため、ブランド名は商標、デザインは意匠と組み合わせて押さえることで、模倣の入り込む隙を減らせます。違いの詳細は商標と意匠の違いを参考にしてください。
不正競争防止法で未登録の表示・形態を守る
不正競争防止法とは、登録の有無にかかわらず不正な競争行為を規制する法律です。同法第2条第1項では、需要者に広く知られた表示と混同を生じさせる行為(第1号・周知表示混同惹起)、著名な表示を無断で使う行為(第2号・著名表示冒用)、他人の商品形態を模倣した商品を販売する行為(第3号・形態模倣)を不正競争と定めています。これらに該当すれば、第3条で差止請求、第4条で損害賠償を求められます。商標登録が間に合わなかった場合の受け皿としても機能する点が、模倣品対策における強みです。条文は不正競争防止法(e-Gov法令検索)で確認できます。
詳しくはこちら
e-Gov法令検索「不正競争防止法(第2条・第3条・第4条)」をご確認ください。
模倣品を発見してから対応するまでの実務フロー

模倣品を見つけたら、感情的に動く前に証拠を固め、段階的に対策を進めることが重要です。一般的には、証拠保全、警告、プラットフォームへの削除申請、法的措置という順序で進みます。
STEP1 証拠を保全し事実を確認する
最初に行うべきは、模倣品の証拠を確実に保全することです。販売ページのURLや画面、出品者情報、価格、商品の現物などを、日付が分かる形で記録・保存しておきます。証拠が不十分だと、その後の警告や法的措置で侵害の事実を立証できなくなる恐れがあります。同時に、自社のどの権利(商標権・意匠権など)が、どの商品で侵害されているかを整理し、対応の方針を定めておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。
STEP2 警告書を送付して使用中止を求める
証拠を固めたら、相手方へ警告書を送り、模倣品の販売中止や在庫の廃棄を求めます。警告書には、侵害している権利の内容と根拠、求める対応、回答期限を明確に記載します。多くの事案は、訴訟に至る前にこの段階で解決へ向かいます。ただし、相手や状況によっては逆に紛争が深刻化する場合もあるため、文面や送付のタイミングは弁理士・弁護士と相談しながら慎重に判断することが望ましいです。商標の無断使用への対応は商標の無断使用への対処法でも詳しく整理しています。
STEP3 ECモール・フリマアプリへ削除を申請する
ECモールやフリマアプリで模倣品が出品されている場合は、各プラットフォームの権利侵害申告フォームから削除を申請します。Amazonや楽天、メルカリなどは、権利者向けの侵害報告制度を用意しており、権利の登録番号や侵害箇所を示すことで出品削除につながります。直接交渉より迅速に被害を止められるため、初動として有効な手段です。出品が繰り返される場合は、申請履歴を残しつつ、税関への申立てや法的措置と並行して進めると効果的です。
STEP4 差止請求・損害賠償・刑事告訴を検討する
警告や削除申請で解決しない場合は、裁判所への差止請求や損害賠償請求を検討します。商標法第38条では、侵害者が得た利益などをもとに損害額を推定する規定が置かれており、被害額の立証を後押しします。悪質なケースでは刑事告訴も選択肢となり、商標法第78条は商標権侵害に対して10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科を定めています。法的措置は専門的な判断を要するため、弁理士・弁護士と連携して進めることが重要です。
詳しくはこちら
e-Gov法令検索「商標法(第38条・第78条)」をご確認ください。
海外・越境ECからの模倣品を止める税関の輸入差止申立

模倣品の多くは海外で製造され、輸入の段階で国内へ流入します。これを水際で食い止める有効な制度が、税関の輸入差止申立てです。発見後の対応だけでなく、流入そのものを止める手段として押さえておきましょう。
輸入差止申立制度とは
輸入差止申立制度とは、権利者が税関に対し、侵害物品の輸入を差し止めるよう求める制度です。関税法第69条の11では、商標権や意匠権、著作権などを侵害する物品が「輸入してはならない貨物」と定められています。さらに同法第69条の13は、商標権者や不正競争差止請求権者が、侵害の事実を疎明する証拠を提出して税関長に認定手続を申し立てられると規定しています。申立てが受理されれば、対象貨物が輸入されようとした際に税関が侵害の該当性を判断します。
詳しくはこちら
e-Gov法令検索「関税法(第69条の11・第69条の13)」をご確認ください。
申立てに必要な要件と手続き
輸入差止申立てには、有効な権利を持つこと、侵害の事実があること、その事実を疎明できること、税関で侵害物品だと識別できることといった要件が求められます。申立書には、権利の内容や侵害品の特徴、真贋を見分けるためのポイントなどを記載します。受理後は通常、一定期間にわたり税関が対象貨物を監視し、該当する貨物を発見すると認定手続に進みます。手続きの詳細や様式は税関「知的財産侵害物品の取締り」で公開されており、申立て前に弁理士へ相談すると準備がスムーズです。
模倣品被害を未然に防ぐ予防策

模倣品対策は、発見後の対応だけでなく、被害を生まない予防の仕組みづくりが欠かせません。権利の早期取得、出願前の調査、社内管理という3つの柱を押さえることで、模倣されにくいブランド体制を整えられます。
商標権・意匠権を早期に取得する
模倣品に法的に対抗する前提として、自社のブランド名やデザインについて商標権・意匠権を早期に取得しておくことが重要です。権利がなければ差止請求や税関への申立ての根拠を欠き、対策が後手に回ります。ブランド保護を重視する企業ほど、調査と出願を計画的に進めています。たとえば導入事例:ライオン株式会社では、商標調査の均質化と効率化を進め、判断のばらつきを抑える体制づくりに取り組まれています。
出願前の商標調査でリスクを洗い出す
ブランド名やロゴを決める段階で商標調査を行うことは、模倣品対策の土台になります。既存の登録商標と似ていないかを事前に確認することで、自社が逆に他社権利を侵害するリスクを避けつつ、権利を取得しやすい名称を選べます。TM-RoBoのAI称呼検索は、称呼(読み方)の類否を統計指標で素早く判断し、調査の質を均一化します。導入事例:ポーラ・オルビスホールディングスでは年間約3,000件規模の調査業務の効率化を、導入事例:ベガコーポレーションではEC事業の現場部門への調査の展開を進めています。
正規品の識別と社内の情報管理を徹底する
正規品と模倣品を見分ける仕組みを整えることも、被害を抑える有効な予防対策です。識別マークやシリアル番号、真贋判定の手段を用意し、自社サイトで注意喚起ページを設けることで、消費者が模倣品をつかむリスクを下げられます。あわせて、製品情報や金型、デザインデータといった社内の機密情報の管理を徹底し、模倣の手がかりが外部へ漏れないようにします。発見後の対策体制を社内で決めておくことも、いざというときの初動を早めます。
よくある質問(FAQ)
- 模倣品と知らずに販売した場合も責任を問われますか
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知らなかった場合でも、差止請求の対象になり得ます。商標権侵害は過失が推定されやすく、損害賠償を求められる可能性もあります。仕入れ時に正規品かどうかを確認することが重要です。
- 個人が海外サイトで模倣品を買うのは違法ですか
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2022年の改正で、個人が海外から模倣品を輸入する行為も税関で差し止めの対象になりました。販売目的でなくても没収され得るため、購入そのものを避けることが大切です。
- 商標登録していないブランドでも模倣品に対抗できますか
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不正競争防止法で対抗できる場合があります。表示が需要者に広く知られている、または商品形態が模倣されているといった要件を満たせば、差止請求や損害賠償を求められます。
- 模倣品対策にかかる費用はどのくらいですか
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商標出願や調査、警告書作成、税関申立て、訴訟など手段ごとに費用は異なります。予防段階の商標調査・出願は比較的低コストで、被害発生後の訴訟は高額になりやすい傾向です。
- 模倣品を見つけたらまず何をすべきですか
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最初に証拠を保全してください。販売ページや出品者情報、価格、現物を日付が分かる形で記録します。そのうえで侵害された権利を整理し、弁理士・弁護士へ相談すると対策を誤りにくくなります。

まとめ
模倣品対策は、被害の実態を理解したうえで、商標権・意匠権・不正競争防止法という法的手段を使い分け、発見から対応、予防までを一貫して進めることが重要です。税関の輸入差止申立てを使えば、海外からの流入を水際で止められます。そして最大の予防策は、商標権・意匠権の早期取得と、出願前の商標調査によるリスクの洗い出しです。
TM-RoBoのAI商標検索やAI称呼検索を活用すれば、調査の質を均一化しながら効率化を図れます。法的措置は専門的な判断を伴うため、最終的な対応は弁理士・弁護士に相談しながら、自社ブランドを守る体制を整えていきましょう。