商標ライセンスとは?使用権の種類と契約の注意点をやさしく解説
目次
自社の登録商標を他社に使わせてライセンス料を得たい、あるいは他社のブランドを借りて製品を販売したいと考えていないでしょうか。商標 ライセンスは、商標権という権利を契約で活用するビジネス手法ですが、使用権の種類や条項の設計を誤ると、ブランドの信用低下や商標登録の取消といった深刻なトラブルを招きます。本記事では、商標ライセンスの仕組み、専用使用権と通常使用権の違い、ロイヤリティの決め方、契約書の必須条項、リスク対策までを商標法の条文にもとづいて解説します。
この記事は以下のような人におすすめ!
- 自社の商標を他社に使わせてロイヤリティを得たい人
- 他社のブランドを借りて商品を展開したい人
- 専用使用権と通常使用権の違いや契約書の必須条項を知りたい人
記事を読み終える頃には、自社に適した使用権の種類を選び、契約書に盛り込むべき条項とリスク対策を把握できるようになります。
この記事の監修者
岩原 将文
株式会社IP-RoBo(TM-RoBo運営会社) CEO 弁護士
主として、特許、著作権その他の知的財産権に関する相談、契約、訴訟等を行う。大学・大学院時代には、機械学習に関する研究を行っていた。
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商標ライセンス(使用許諾契約)とは

はじめに、商標ライセンスの基本的な仕組みと、契約が使われる場面を整理します。前提となる商標権の理解も欠かせません。
商標ライセンスの仕組みと目的
商標ライセンスとは、商標権者(ライセンサー)が相手方(ライセンシー)に対し、登録商標を一定の範囲で使用することを許諾する契約です。商標権者は指定商品・指定役務について登録商標を独占的に使用できる権利を持つため、他者が無断で使用すれば商標権侵害となり、差止請求や損害賠償請求の対象になります。ライセンス契約を締結すれば、ライセンシーは適法に商標を使用でき、ライセンサーは使用料(ロイヤリティ)という対価を得られます。ブランド力のある商標を活用して事業を広げたい企業と、商標権という資産から収益を生みたい権利者の双方にメリットがある仕組みです。
身近な商標ライセンスの事例
商標ライセンスは、キャラクターグッズやフランチャイズなど身近なビジネスで広く使われています。たとえばキャラクターの名称やロゴを商品パッケージに表示して販売する場合、製造元はライセンス契約にもとづいて商標を使用しています。フランチャイズチェーンの加盟店が本部の店名ロゴを掲げるのも、契約による使用許諾の典型例です。グループ企業間で親会社の登録商標を子会社が使用する場合や、企業のコラボレーション商品でお互いのブランドを表示する場合にも契約が必要になります。無償の許諾であっても、後の紛争を防ぐために使用条件を契約書で明確にすることが実務の基本です。
前提として商標権の取得・維持が必要
商標ライセンスの前提は、対象となる商標が登録されていることです。ライセンスの対象は商標権であり、権利が存在しなければ許諾する根拠がありません。出願中の商標について将来のライセンスを見据えた契約を結ぶことは可能ですが、商標法上の使用権が発生するのは設定登録後です。またライセンス期間中に更新登録を怠って商標権が消滅すれば、契約の基盤そのものが失われます。ライセンサーには権利の維持管理が、ライセンシーには契約前の権利確認が求められる理由です。商標権の効力と基礎知識を押さえたうえで、契約の検討に進んでください。
商標ライセンスの使用権は2種類

商標法が定める使用権には、専用使用権と通常使用権の2種類があります。独占の度合いと登録の要否が大きく異なるため、違いを正確に押さえてください。
専用使用権とは(商標法第30条)
専用使用権とは、設定された範囲内でライセンシーが登録商標を独占的に使用できる強い権利です。商標法第30条は、商標権者がその商標権について専用使用権を設定できると定めており、専用使用権者は設定行為で定めた範囲内で指定商品・指定役務についての使用を専有します。設定範囲では商標権者自身も商標を使用できなくなるほど独占の効力が強く、専用使用権者は自己の名義で差止請求などの権利行使もできます。効力の発生には特許庁の商標登録原簿への設定登録が必要で、契約だけでは効力が生じません(商標法第30条第4項が準用する特許法第98条)。なお地域団体商標に係る商標権には専用使用権を設定できない点にも注意が必要です。
詳しくはこちら
e-Gov法令検索「商標法(第30条)」をご確認ください。
通常使用権とは(商標法第31条)
通常使用権とは、許諾された範囲内で登録商標を使用できる非独占の権利です。商標法第31条にもとづき、商標権者は他人に通常使用権を許諾でき、契約の合意だけで効力が発生します。登録は効力発生の要件ではありませんが、特許庁に通常使用権の登録をすれば、商標権がその後譲渡された場合でも新しい商標権者に対して使用権を主張できます(同第4項)。通常使用権は非独占が原則のため、ライセンサーは複数の相手方に同じ商標を許諾できます。実務では、契約で「第三者には許諾しない」と約束する独占的通常使用権という形態も使われており、独占の必要性と登録の手間を比べて選択することになります。
詳しくはこちら
e-Gov法令検索「商標法(第31条)」をご確認ください。
専用使用権と通常使用権の比較表と使い分け
2つの使用権の違いは、独占性・効力発生要件・権利行使の可否で整理できます。主な相違点は次のとおりです。
| 項目 | 専用使用権 | 通常使用権 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 商標法第30条 | 商標法第31条 |
| 独占性 | 設定範囲で独占(商標権者も使用不可) | 非独占が原則 |
| 効力発生 | 特許庁への設定登録が必要 | 契約の合意のみで発生 |
| 差止請求 | 自己の名義で可能 | 原則不可 |
ブランドを1社に委ねて強力に展開させるなら専用使用権、複数の相手方に柔軟に許諾するなら通常使用権が基本の使い分けです。独占させる場合でも、登録の手続を避けたいときは独占的通常使用権が選択肢になります。
商標ライセンスのメリット・デメリット

商標ライセンスは、ライセンサーとライセンシーの立場でメリットとデメリットが異なります。契約交渉の前に双方の視点を公平に把握してください。
ライセンサー(商標権者)側のメリット・デメリット
ライセンサーの最大のメリットは、自ら製造や販売を行わずにロイヤリティ収入を得られることです。ライセンシーの販売網を通じてブランドの露出が増え、商標の信用がさらに蓄積される効果も期待できます。一方でデメリットはブランド価値の毀損リスクです。ライセンシーが品質の低い製品に商標を付して販売すれば、需要者の信用が損なわれます。さらにライセンシーが品質の誤認や他人の業務との混同を生じる使用をした場合、何人でも商標登録の取消審判を請求できると商標法第53条が定めており、商標権者自身が権利を失うおそれまであります。使用条件の明確化と品質の監督体制が欠かせません。
詳しくはこちら
e-Gov法令検索「商標法(第53条)」をご確認ください。
ライセンシー(使用者)側のメリット・デメリット
ライセンシーのメリットは、確立されたブランド力を自社の製品・サービスにすぐ活用できることです。自社でゼロからブランドを育てる時間と広告費用を節約し、知名度のある商標で販売を伸ばせます。デメリットは、事業の基盤を他社の権利に依存する構造です。契約期間の終了や解除により商標を使えなくなれば、パッケージや看板の変更などの負担が発生します。ライセンサーの商標権が無効審判で消滅する可能性もゼロではありません。契約前には対象商標の権利状況を調査し、契約書には権利が消滅した場合のロイヤリティの扱いなど、リスク分担の条項を盛り込むことが自衛策になります。
ライセンス料(ロイヤリティ)の決め方と相場

ロイヤリティの設定方式は大きく3つに分かれます。金額の決定要素と合わせて、自社に合った方式を検討してください。
ロイヤリティの3つの方式
ロイヤリティの設定方式は、ランニング・ロイヤリティ(出来高払い)、ランプサム・ペイメント(固定額払い)、両者の組み合わせの3種類が基本です。ランニング方式は売上高や販売数量に一定の料率を掛けて算定する方式で、実績に応じた公平な対価になりやすい反面、ライセンサーには帳簿の確認や販売数量の報告を受ける管理の手間が生じます。固定額方式は契約時に金額が確定するため管理が簡単ですが、販売実績と対価が連動しません。実務では、契約時に一定のイニシャル・ペイメントを受け取り、加えて売上に応じたランニング・ロイヤリティを設定する組み合わせ方式も広く使われています。
ロイヤリティの相場の考え方
商標のロイヤリティに一律の相場はなく、ブランド力・対象商品の利益率・独占の有無で個別に決まります。著名ブランドほど料率は高く、専用使用権や独占的な許諾は非独占よりも高い対価が正当化されます。許諾範囲(商品の種類・地域・期間)が広いほど金額も上がる構造です。金額交渉の材料として、同業界のライセンス事例や対象商標の登録状況・類似商標の存在を調査しておくことが有効です。最低保証額(ミニマム・ロイヤリティ)を設定して、販売が伸びない場合でも一定の対価を確保する設計もライセンサーの定番の手法です。金額の妥当性に迷う場合は、知的財産に詳しい弁理士や弁護士への相談を推奨します。
商標ライセンス契約書に定めるべき主な条項

契約書の条項設計は、トラブル予防の中心です。ひな形をそのまま使わず、自社の取引に合わせて4つの領域を必ず確認してください。
使用許諾の範囲(商標・商品・地域・期間)
使用許諾の範囲は、対象商標・対象商品(役務)・地域・期間の4要素で特定します。登録番号で商標を特定し、指定商品・指定役務のうちどの範囲の使用を認めるのか、日本全国か特定地域か、契約期間は何年で更新条件はどうするかを明記する形です。範囲があいまいな契約は、想定外の商品への使用や地域外での販売といった紛争の火種になります。専用使用権か通常使用権か、独占か非独占かという使用権の種類も必ず明示してください。ライセンシーが第三者に再許諾(サブライセンス)できるかどうかも、あらかじめ定めておくべき重要事項です。
ロイヤリティと支払条件
ロイヤリティ条項では、算定方式・料率・支払時期・報告義務をセットで定めます。ランニング方式なら、売上の定義(総売上か純売上か)、料率、締め日と支払期限、販売数量・売上の報告義務、ライセンサーによる帳簿の閲覧・監査の権利までを具体的に記載する必要があります。報告と監査の仕組みがなければ、過少申告があっても発見できません。最低保証額を設ける場合はその金額と精算方法も明記します。契約が中途で終了した場合に支払済みロイヤリティを返還するのかどうかも、争いになりやすいポイントのため、返還の有無を明文で定めておくことが安全です。
品質管理・使用態様の遵守事項
品質管理条項は、ブランドの信用と商標登録そのものを守るための必須条項です。商標法第53条は、ライセンシーが品質の誤認や出所の混同を生じる使用をした場合、商標登録の取消審判を請求できると定めており、商標権者が「相当の注意」をしていたときに限り取消を免れるとしています。契約書には、製品の品質基準、商標の表示方法(ロゴの色・サイズ・表記ルール)、事前承認の手続、サンプル提出義務などを定め、ライセンサーが実際に監督している証拠を残すことが大切です。使用ガイドラインを別紙として添付し、違反時の是正措置と解除事由を紐づける設計が実務の定石です。
詳しくはこちら
e-Gov法令検索「商標法(第53条)」をご確認ください。
契約終了時の措置・解除事由
契約の出口を定める条項は、締結時にこそ丁寧に設計すべき項目です。ロイヤリティの不払い、品質基準への違反、ブランドイメージを害する行為などの解除事由を具体的に列挙し、催告の要否や解約の手続を明確にします。契約終了後については、在庫品の販売をいつまで認めるか、看板・パッケージ・販促物から商標をいつまでに除去するか、違反した場合の損害賠償を定めておく必要があります。終了後もライセンシーが使用を続ければ商標権侵害として差止請求の対象になりますが、紛争を避けるためには契約書で終了後の義務を明文化しておくことが最善の予防策です。
商標ライセンスのリスクと対策

商標ライセンスには、契約書だけではカバーしきれない商標法上のリスクがあります。代表的な3つのリスクと対策を確認します。
ライセンシーの不正使用による商標登録取消(商標法第53条)
ライセンシーの不正使用は、商標権者の登録そのものを失わせるリスクです。商標法第53条により、専用使用権者または通常使用権者が品質の誤認や他人の業務との混同を生じる使用をしたときは、何人も取消審判を請求できます。取消を免れるには、商標権者がその事実を知らず、かつ相当の注意をしていたことが必要です。取消の審決が確定すると、元の商標権者は確定日から5年間、同一・類似の商標について商標登録を受けられません(同第2項)。対策は、契約書の品質管理条項にもとづく定期的な監督の実施と、その記録の保存です。許諾したまま放置する運用が最も危険だと理解してください。
詳しくはこちら
e-Gov法令検索「商標法(第53条)」をご確認ください。
ライセンサーの破産・商標権譲渡への備え
通常使用権の登録は、ライセンサー側の事情変化からライセンシーを守る手段です。商標法第31条第4項により、通常使用権を特許庁に登録しておけば、商標権がその後第三者に譲渡された場合でも、新しい商標権者に使用権の効力を主張できます。登録がなければ、譲渡先から使用の中止を求められる事態が起こり得ます。移転・変更などの対抗要件も登録が基準です(同第5項)。事業の根幹に関わるブランドの許諾を受けるライセンシーは、契約書に使用権の登録に協力する義務を定め、実際に登録手続まで済ませておくことを推奨します。ライセンサーの信用状況も契約前の確認事項です。
詳しくはこちら
特許庁「通常使用権設定登録申請書【商標】」をご確認ください。
ライセンス前の権利状況の調査
ライセンス契約の交渉前には、対象商標の権利状況の調査が欠かせません。確認すべきは、商標権が有効に存続しているか、指定商品・指定役務が許諾を受けたい範囲をカバーしているか、類似の商標を第三者が保有していないか、の3点です。範囲外の商品に商標を使えば、他人の商標権を侵害する危険すらあります。TM-RoBoのAI商標検索を使えば、対象商標と類似する登録商標の存在を統計指標で素早く確認でき、契約交渉の材料づくりにも役立ちます。導入事例:株式会社ベガコーポレーションでは、現場と知財部門が連携した商標確認の体制づくりにTM-RoBoが活用されています。また導入事例:広江アソシエイツ特許事務所のように、専門家の調査業務でも効率化と正確性の両立に役立っています。商標調査の基本手順を押さえて、安全な契約につなげてください。
商標ライセンスに関するよくある質問(FAQ)
- ロイヤリティを無償にすることはできますか?
-
できます。対価の有無や金額は当事者の合意で自由に決められます。グループ会社間では無償の許諾も広く行われています。
- 専用使用権は契約書を交わすだけで効力が生じますか?
-
生じません。専用使用権は特許庁の商標登録原簿への設定登録が効力発生の要件です(商標法第30条第4項で準用する特許法第98条)。
- 登録前(出願中)の商標でもライセンスできますか?
-
契約自体は可能です。ただし商標法上の使用権は設定登録後に発生するため、拒絶された場合の精算方法を契約で定めてください。
- グループ会社に商標を使わせる場合も契約は必要ですか?
-
必要です。別法人の使用は許諾の根拠を明確にしないと商標管理上のリスクになります。書面で範囲と条件を定めてください。
- ライセンシーの不正使用で本当に商標登録が取り消されますか?
-
取り消されます。商標法第53条にもとづく取消審判の対象です。商標権者が相当の注意をして監督していた場合のみ免れられます。

まとめ:商標ライセンスは使用権の選択と契約設計がカギ
商標ライセンスは、商標権者が登録商標の使用を許諾し、ライセンシーがブランド力を活用してビジネスを広げる契約です。使用権には独占的な専用使用権(商標法第30条)と非独占の通常使用権(第31条)があり、独占の必要性と登録の要否で使い分けます。ロイヤリティは出来高払いと固定額払いを軸に設計し、契約書には許諾範囲・支払条件・品質管理・終了時の措置を具体的に定めることがトラブル予防の要点でした。
ライセンシーの不正使用による取消(第53条)を防ぐ監督体制も忘れてはなりません。契約の前提となる権利確認には、TM-RoBoのAI商標検索による調査が有効です。条項の最終確認は弁理士・弁護士などの専門家に相談し、安全なライセンスビジネスを実現してください。
詳しくはこちら
e-Gov法令検索「商標法」および特許庁「通常使用権設定登録申請書【商標】」をご確認ください。
